【Vintage File】#8 Gibson 1963年製 J-200 Blonde ~遠き黄金郷~

Gibson アコースティックギター ヴィンテージ 特集
急激に寒くなってきた今日この頃ですが、皆様如何お過ごしでしょうか?

【Vintage File】#6.5にて紹介させて頂いた、アーリントンギターショーでの買付品が輸入手続きを経て渋谷店に到着しましたので、今回はそのうちの1本を紹介させて頂きます。

既に各所で報道されている通り、2017年1月2日より、ローズウッド全種がワシントン条約(附属書Ⅱ)により規制される事になるのですが、それよりも現時点で規制の厳しい附属書Ⅰ扱いとなるハカランダ(ブラジリアン・ローズウッド)、手続きにとにかく手間と時間がかかります。
今回紹介させて頂くギターも指板とブリッジはしっかりハカランダの為、買い付けした身としては手続き中~輸送中のコンディションの変化が毎回不安なのですが、今回も大きなトラブルなく無事に到着しました。

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Gibson 1963年製 J-200 Blonde。
【Vintage File】#2において、1951年製のSJ-200を紹介させて頂きましたが、その10年程後の個体ということになります。
しかし、同じスーパー・ジャンボながら、外見、内部共に各所の仕様が変更されているのが見て取れます。

大きな変更箇所としては、このモデルの「顔」とも言えるブリッジとピックガードの形状変更です。

ブリッジはムスタッシュ(口髭状)・ブリッジですが、50年代以前とは異なるデザインで、木製のブリッジベースの上に所謂T.O.M.(チューンオーマティック)ブリッジが取り付けられた仕様となっており、T.O.M.ブリッジ自体の高さも両脇のネジを調整することで上下できるようになっています。
ピックガードはフラワーの柄が大きくなり、外側の枠線が無くなった、所謂後期型デザインで、ピックガードの素材自体も赤みを帯びた厚手のものに変更されています。

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経年によりラッカーが変色し、黄金色のような色合いに変化したボディが美しい1本。
見る角度によって表情を変える、何とも趣深いルックスです。
それにしてもボディバックの見事なフレイムに目を奪われます。
現代よりも潤沢に木材があった時代ではありますが、フラッグシップ・モデルという事で、その中でも選りすぐった材を使用している事が伺えます。

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ネック裏もご覧の通りびっしりとフレイムが入っています。

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ネックヒール部付近。ボディバックには60年代のナチュラルフィニッシュのギブソンアコースティックに良く見られる謎の黒いラインが入っています。
用途や理由について、様々な説がありますが、詳細は謎のままです。当時のセカンド品か・・・?と思ってもセカンドシリアル入りで黒ラインなしも頻繁に見る(というより、個人的にセカンドシリアル+黒ライン入りの例を見たことがありません)ため、やはり謎のままです。
ボディサイド、ネックヒール両側に細長い台形状に黒いラインが入っているパターンが最も多いのですが、この個体はその部分にはラインは入っていません。
J-200やB-25N、LG-3、さらに当時同じ工場で作られていたEpiphone TexanやCortez等でもそこそこの頻度で見られますが、なぜかJ-50ではあまり見られないのも謎のひとつ。

内部も見てみましょう。

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ブレーシングは60年代らしい背の低めなノンスキャロップ・Xブレーシング。過去紹介させて頂いた51年製と比較するとかなり形状が異なっているのが分かります。
内部で最も特異なのはネックブロックで、サウンドホール付近までせり出した独特の形状です。
J-200から遅れる事数年、60年代末期になると他のモデルでも同様にせり出した形状のネックブロックが採用されますが、こちらのJ-200の曲線的なスタイルのものとは形状がやや異なっています。

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楕円状のオレンジ・ラベル。J-200は高級モデルのため、フラットトップ・アコースティックながらJ-45やLG-2等とは異なり、ボディ内部にシリアルナンバー入りのラベルが貼られます。当時他にラベルが貼られていたのはHummingbirdやDoveといった、やはり華やかなルックスの高級モデルです。
近年ギブソン・モンタナのアコースティック・モデルのうち、50年代や60年代の仕様を復刻させているモデル(1960's J-45など)が限定モデルとして各種リリースされていますが、その中でも凝ったモデルはフォントや文字の配置等を60年代当時のラベルと同様のデザインにわざわざ作り変えて使用していますね。

1951年製とは趣を変えつつも、やはりフラッグシップ・モデルとしての風格を備えた逸品です。サウンドの方は他のギブソン・アコースティックと同様、どちらかと言うとロック寄りな方向に舵を切っており、T.O.M.ブリッジ特有の金属的なジャキジャキしたアタッキーなニュアンスが、好きな方には堪らない味となっています。
今回紹介された本器も、そんな時代の60年代当時にとあるミュージシャンによって愛用され、大切にされつつレコーディングやライブで活躍してきた個体で、歴史の生き証人といえる1本です。

これから補修・調整を行った後、渋谷店店頭にて展示させて頂く予定です。

次回の【Vintage File】もお楽しみに!

この記事を書いた人

佐藤俊太
渋谷店マネージャー(海外買付担当)。普段は渋谷店アコースティックフロアに籍を置きつつ、イシバシ社内のエレキやベース、アンプ等含めた海外でのヴィンテージ楽器の買付も担当、定期的に渡米し現地のディーラー/コレクターと直接交渉を重ね買付を行っている。特にアコースティックギターに精通しているが、プライベートではパンクやガレージロック、ダークなアンビエント等を好み、愛器は1970年製Guild Bluesbird、モディファイした近年製SG Special、自作のストラト・タイプ、Mayonesの7弦などなど。個人的にはヴィンテージ/近年製問わずアクの強い楽器が大好物。はじめての楽器選びから一生モノとなるとっておきの1本まで、皆様の愛器との時間が最高のものとなるべく、精一杯お手伝いさせて頂きます。