【Vintage File】#10 Gibson 1947-48年製 L-50 ~名門の源流~

Gibson アコースティックギター ヴィンテージ 特集
まだまだ寒い日が続きますが、皆様如何お過ごしでしょうか?

【Vintage File】記念すべき第10回の今回は、あの名門ブランドの所謂アーチトップ・ピックギターを取り上げたいと思います。

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本器はモダンロゴ初期モノとなるGibson L-50。
ボディ内部のファクトリー・オーダー・ナンバーは擦れて読み取れませんが、テーパード・ヘッド、縁取りありのべっ甲柄ピックガード等、全体的な仕様から、1947年前後に作られたものと思われます。

ここで今更ながら、ギブソンのブランドとしての歴史を振り返ってみましょう。

創業者オーヴィル・H・ギブソン(Orville Henry Gibson)は1856年アメリカ・ニューヨーク州シャタゲイにて生まれます。
1894年頃、37〜8歳の頃からミシガン州カラマズーにて楽器製作に携わり始め、1902年に他の5人の出資者達と共にギブソン・マンドリン・ギター・マニュファクチャリング株式会社を設立。
社名が表すとおり、元々はギターではなく、マンドリンやフィドル等の所謂アーチトップ属の弦楽器を手がける職人集団でした。ギターに関しても、1910年代まではStyle-Oなどのバイオリンやフィドル等の影響の強いアーチトップ・アーチバックの楽器が主力で、現在の主力機種といえるフラットトップ・アコースティックが登場するのは、1920年代(L-0、L-1のフルモデルチェンジ)まで待たなければなりません。
この点は1833年の創業当時からフラットトップギターを手がけていたライバルのMartinとは対照的と言えます。

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40年代初頭から末期まで見られる、独特の赤みが差した2トーンのサンバーストに、経年で色焼けやウェザー・チェックが加わり、非常に味わい深いルックスです。

細部も順番に見ていきましょう。

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スクリプト(筆記体)のGibsonロゴから、現在馴染みのある所謂モダンロゴに切り替わった直後のものです。
創業当初からフラットトップを製作していたMartinや、エンジニア出身のFenderとは異なる、アーチトップ屋らしいデザインのヘッドですね。
30年代から40年代にかけて、ギブソンのヘッドの大きさや形状は年を追うごとに微妙に変化するのですが、この時期になると良く見慣れた形状となっていきます。

ペグはオリジナルで、同時期のJ-45やSouthern Jumbo等でも見られるタイプです。この時期のペグボタンは樹脂の配合精度が現在と比べ良くなかったためか、同じペグに組み込まれている中でもシュリンクする箇所としない箇所の個体差が激しいのですが、本器は6つとも同じ程度でシュリンクしていますね。シュリンクしているとは言っても、程度はそれほどひどくなく、現状問題なく使用できます。

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L-4やL-5といった単板削り出しの高級モデルと比較すると、当時としても廉価グレードのモデルですが(最初期のL-50には単板削り出し仕様のものも存在します)、元来フィドルやマンドリン等のアーチトップ楽器を手がけてきた職人上がりのブランドらしく、見事な曲線美です。
L-50やL-48といったモデルはプレス成型ですが、後にその技術はES-335等の一世を風靡するセミアコースティックギターの製造にも受け継がれ、その際のカラマズー工場で稼動していたプレスマシンが現在も現行のアーチトップモデルを手がけるメンフィス工場で現役で稼動しています。脈々と受け継がれる伝統がロマンを感じさせます。

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ネックジョイント部です。同時期のJ-45等のフラットトップはバインディングの巻き終わり(切れ目)がボディ側面の見える場所にあるのに対し、本器はネックジョイント中央の目立たない場所にありますね。

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テイルピースはオリジナルですが、過去破断した事があるらしく、補修されています。

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また、過去6弦側にもピックガードを付けていた時期があったらしく、取り付けビスの跡が残されています。
アーチトップをダブルガード仕様にしてがっしがっし弾く...というのは如何に豪快なアメリカ人でも考えにくいため、恐らくレフティ仕様になっていたのではないかと推測されます。

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ボディ内部の様子です。
スプルーストップ、メイプルサイド&バック。ボディトップにブレーシングが貼られているだけの、完全な「ハコモノ」である事が伺えます。
所謂ラウンドホールのフラットトップ・アコースティックギターとは異質な鳴りですが、枯れていながらふくよかで甘く、ボリューム感のある鳴りを出すのに一役かっている構造です。



駆け足で見てきましたが、如何でしょうか?
当時としてもどちらかと言うと廉価グレードのお手頃なアーチトップ・ギターですが、その為貧しいブルーズ・マンやジャズミュージシャン達に愛されてきた側面もあり、ギブソンの楽器職人としてのルーツを感じさせる味わい深い1本と言えます。
ブルースやジャズ、ハワイアン等はもちろん、歌モノの弾き語りやロックっぽい曲で使用してもクールですね。

11回目以降・次回以降の【Vintage File】も続々面白い楽器が登場しますので、お楽しみに!

この記事を書いた人

佐藤俊太
渋谷店リユースマネージャー。普段は渋谷店アコースティックフロアに籍を置きつつ、イシバシ社内のエレキやベース、アンプ等含めた海外でのヴィンテージ楽器の買付も担当、定期的に渡米し現地のディーラー/コレクターと直接交渉を重ね買付を行っている。特にアコースティックギターに精通しているが、プライベートではパンクやガレージロック、ダークなアンビエント等を好み、愛器は1970年製Guild Bluesbird、モディファイした近年製SG Special、自作のストラト・タイプ、Mayonesの7弦などなど。個人的にはヴィンテージ/近年製問わずアクの強い楽器が大好物。はじめての楽器選びから一生モノとなるとっておきの1本まで、皆様の愛器との時間が最高のものとなるべく、精一杯お手伝いさせて頂きます。