【Vintage File】#11 Fender 1967-68年製 Bass VI Sunburst ~異形の6弦~

FENDER Fender USA エレキギター ベース ヴィンテージ 多弦ベース 特集
普段はギタリストですが、バンドによってはベーシスト(ピック弾きオンリー)にもなる渋谷店佐藤です。

【Vintage File】第11回目の今回は、久々にソリッド・ボディの楽器の登場です。

 

「Fender 1967-68年製 Bass VI」
分類上、エレクトリック・ベースなのか?バリトン・ギターなのか?意見の分かれる所ですが、初登場したのは1961年。
同時期に既にDanelectroが同様のコンセプトのモデルをリリースしており、後追いという形ではありましたが、当時そういったニーズがあったのでしょう。
所謂現代の一般的な6弦ベースとは異なり、4弦ベースに高音弦を2本足した仕様で、チューニングは通常ギターの1オクターブ下(6弦からEADGBE)で使用します。
同時期のJaguarやJazzmasterでも採用されていた、左右非対称のオフセット・コンター・ボディが流麗な印象を感じさせるルックスです。
各部を順番に見ていきましょう。

 

ヘッドは一般的な所謂6連ペグのギター同様のシェイプです。本個体は1,6弦のペグが交換されています。
弦は現在ダダリオから専用のラウンドワウンドのもの(.024 .034 .044 .056 .072 .084)がリリースされています。

 

ネック周りです。
大柄なイメージのあるBASS VIですが、ネックシェイプは同時期のJazz Bass同様の、ナット幅の狭く手に吸い付くようなフィット感のスリムな形状(所謂Aネック)となっています。



コントロール周りです。
所謂後期型にあたる本器は、同時期のJaguarと同様のデザインのヨーク付シングルコイルPUが3基搭載されています。
ボディ1弦側には、各PUのon/offスイッチ3基及び、"Strangle"スイッチと呼ばれるローカットスイッチの計4基のスイッチを備えます。

 

ブリッジまわりです。
こちらもJaguar同様のミュート機構や、フローティング・トレモロ・ユニットが搭載されています。
所謂エレクトリック・ベースで、トレモロユニットを搭載しているのは、この時代としては非常に画期的と言えます。
ミュート機構はウッドベースのようなサウンドを出す事も狙ったものでしょうか?

 

プレート上のシリアル・ナンバーは"f"ロゴ入りの1967年シリアルとなっています。
ネックジョイント部には塗装時のハンドル跡が残されています。

 

ネック・デイトは1967年5月6日、ポットはトーン側は交換されていますが、ボリューム側はデイト:137 6642と1966年製となっています。
尚、ピックアップ・デイトは1967年12月となっているため、本器は'67年の年末~'68年初め辺りのタイミングで組み上がり出荷された個体と思われます。
*CBS買収後のFenderのポットデイトについて
この後1970年代まで、1966年デイトのCTSポットが使用されている個体が数多く見られますが、これはCBS買収後の増産を見越し、1966年にFenderがCTSから大量にポットを仕入れた為、というのが定説となっています。



ボディ表面のブリッジ横6弦側の謎の痕跡です。
アクシデントで付いたにしては妙な形状の為、何らかの装飾を付けていた跡かとも推測されますが、詳細は不明です。
好き嫌いは分かれるポイントですが、長い年月を重ねたヴィンテージ楽器の場合、こういった箇所も一種のチャーム・ポイントで、不思議な魅力を感じさせます。

ご覧頂いたように、スペックを見ると中々のキワモノでありながら、60年代当時のニーズを確かに捉えており、歴史的名演を支えてきた名器と言えるモデルです。

このモデルの使用ミュージシャンとして最も有名なのはジョン・レノン&ジョージ・ハリスンでしょう。基本的にはポール・マッカートニーがピアノを弾く楽曲でベース不在の穴を埋めるためギタリストの2人が使用した、というのが定説となっており、Let It Beのセッション時にジョン・レノンが本器同様のブロック・インレイの個体をプレイしている記録も残されています。ナット幅が狭く、スケールも一般的なエレキ・ベースと比べると短いのですが、ギタリストの2人にとってはこちらの方が持ち替えはスムーズだったのでしょうか?

同様に本来ギタリストであるプレイヤーとしては、ジョー・ペリー(Aerosmith)、ロバート・スミス(The Cure、近年はメンバーのリーヴス・ガブレルスが代わりに使用する場面もあり)らの愛用が知られています。
スケールが短い為サウンドはどちらかというとハリが無く、ローファイな印象が強いですが、その良い意味でルーズで独特なサウンドには今もプロ・アマ問わずファンが多いモデルですね。登場から半世紀程経過しますが、古臭さを感じさせない流麗なデザインも美しく、ステージ上でもインパクト大!な1本と言えます。

次回の【Vintage File】もどんな名器が登場するか、お楽しみに!

この記事を書いた人

佐藤俊太
渋谷店リユースマネージャー。普段は渋谷店に籍を置きつつ、イシバシ社内のエレキやベース、アンプ等含めた海外でのヴィンテージ楽器の買付も担当、定期的に渡米し現地のディーラー/コレクターと直接交渉を重ね買付を行っている。特にアコースティックギターに精通しているが、プライベートではパンクやガレージロック、ダークなアンビエント等を好み、愛器は1970年製Guild Bluesbird、モディファイした近年製SG Special、自作のストラト・タイプ、Mayonesの7弦などなど。個人的にはヴィンテージ/近年製問わずアクの強い楽器が大好物。はじめての楽器選びから一生モノとなるとっておきの1本まで、皆様の愛器との時間が最高のものとなるべく、精一杯お手伝いさせて頂きます。

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