ストリングベンダー特集その2

ストリングベンダー
前回に続いてストリングベンダー特集第二弾です。
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今回はストリングベンダーの演奏を聴くことができるアルバムを紹介いたしましょう。残念ながら、ストリングベンダーを演奏するギタリストが全て模範的な演奏をするわけではありません。ここでは比較的入手しやすいCD化されたアルバムで、ストリングベンダー入門者が「なるほど」と思うような作品を中心に紹介していこうと思います。

●(Untitled)/Byrds



まずは元祖ストリングベンダー奏者、クラレンス・ホワイトを擁したバーズの1970年の作品から。
日本盤では『タイトルのないアルバム』と言うタイトルで発表されました。アナログ盤は二枚組構成で、一枚目はライブ録音、二枚目はスタジオ録音という内容でした。現在販売されているCD版は、アナログ盤の一枚目、二枚目を一枚のCDに集約し、もう一枚未発表ライブ音源を収録したCDを足した二枚組構成に改めて、タイトルも(Untitled/Unissued)に改められています。
CD一枚目のライブ音源でのクラレンスの演奏はどちらかというとロック色が濃く、後述のジミー・ペイジの演奏と比較してみると面白いでしょう。⑦Eight Miles Highのインプロヴィゼーションでは、Amのキーを無視した(?)Aメジャーでのアドリブに度胆を抜かれます。
ちなみに、クラレンスによるストリングベンダーの模範演奏が聴けるバーズ作品としては”Sweetheart Of The Rodeo”、”Ballad Of Easy Rider”、”Live At The Fillmore”といったアルバムもお勧めです。

●Silver Meteor/Various Artists



バーズ解散後にクラレンス・ホワイトがソロ・アルバム作成を準備していましたが、彼の事故死で録音済みの音源はお蔵入りとなっていました。後年、その音源に加えて、日の目を浴びることがなかった良質なカントリー・ロック系のシンガー・ソングライターやバンドのナンバーを足して登場したのがこのアルバム。しかもCDとなってさらに充実した内容となりました。
最初の四曲がクラレンスのソロ。④Why You Been Gone So Longではライ・クーダーのスライドとクラレンスのストリングベンダーの競演を聴くことができます。またクラレンスとジーン・パーソンズが参加したエヴァリー・ブラザーズのカントリー・ロック時代のナンバー、⑦I'm On My Way Back Home Again、⑧Cockoo Birdのストリングベンダーの演奏は圧巻です。
さらにクラレンスの愛弟子と言えるボブ・ウォーフォードのストリングベンダーが光るマイケル・ディナーの⑬The Great Pretender、クラレンスがストリングベンダーで客演するポール・シーベルの⑭Pinto Pony、ボブの泥臭いストリングベンダーが堪能できるレッド・ローズの⑱Great American Thunder Turkeyも収録されており、ストリングベンダーのサンプル音源集としても秀逸な一枚。

●Running Down The Road/Arlo Guthrie



クラレンス・ホワイトの数あるセッション・ワークの中で一枚選ぶならこれ。ジェイムズ・バートンのドブロ、ライ・クーダーのマンドリンなどと絡みあう、「ぐにゃっ」としたストリングベンダーこそ真骨頂と言えるかもしれません。

●Hasten Down The Wind/Linda Ronstadt



西海岸の歌姫、リンダ・ロンシュタットの出世作であり、熱心なファンの間でボブ・ウォーフォードの存在を知らしめたアルバムでもあります。R&Bのスタンダード、④The Dark End Of The Streetとリトル・フィートの代表曲の一つ、⑦Willin'でボブのストリングベンダーを聴くことができます。特にハーモニクスのベンドをフィーチャーした⑦はストリングベンダー練習曲として一押し。

ちなみに、クラレンス・ホワイトが参加したジョニー・ダレルの"California Stop Over"というアルバムがあるのですが(過去にCD化されています)、こちらにもWillin'が収められています。クラレンスの演奏と聴き較べてみると面白いでしょう。

●Valley High/Ian Matthews



イギリスのフォーク・ロックを代表するフェアポート・コンヴェンション出身のイアン・マシューズ。彼がアメリカに渡りカントリー・ロック路線のシンガー・ソングライターに転身した時代のアルバムでも、⑦Save Your Sorrow、⑨Propinquityでボブ・ウォーフォードによるクラレンス譲りの「ぐにゃっ」としたストリングベンダーを聴くことができます。
ちなみにマイケル・ネスミス作の⑨のマイケル本人の"Live At The Palais”バージョンでは、アル・パーキンスがボブのコピーをしているのが興味深いです。

●Desert Rose/Chris Hillman



元バーズのクリス・ヒルマンの本アルバムでもボブ・ウォーフォードの好演が楽しめます。雑誌のインタビュアーとしてクリスに会ったとき、ストリングベンダーを使う前のクラレンス・ホワイトの演奏が好きだと言っていましたが、①Why You Been Gone So Long、
②Somebody's Back In Townなどのナンバーでボブには存分にストリングベンダーを弾かせています。

●Lonesome Feeling/Herb Pedersen



スタジオ・ミュージシャンとしても活躍するハーブ・ペダーセンの作品。ここでも④The Home Coming、⑤Easy Ride、⑥Lonesome Feelingでボブ・ウォーフォードが大活躍。⑤と上述のリンダ・ロンシュタットのアルバムの⑦のソロを比較してみてください。CD化されていないマイケル・ディナーのファースト・アルバム"Great Pretender"に収録されている'Yellow Rose Express'のソロとともに、ファンの間では「ボブ・ウォーフォードの三大黄金フレーズ」と呼ばれています。

●Their Greatest Hits 1971-1975/Eagles



楽器考察シリーズで取り上げたイーグルスのベスト盤ですが、①Take It Easy、⑦Tequila Sunrise、⑨Peaceful Easy Feelingでバーニー・レドンのストリングベンダーの演奏を聴くことができます。⑦はペダル・スティールと聞き間違えてしまいそうです。そして、⑨のカラっとしたテレキャスターの音色とストリングベンダーのフレージングはまさにカリフォルニア・サウンドと言えるでしょう。

●More Great Dirt:The Best Of The Nitty Gritty Dirt Band/Nitty Gritty Dirt Band



バーニー・レドンはイーグルス脱退からしばらくして、やはり楽器考察シリーズで取り上げたニッティ・グリティ・ダート・バンドに順レギュラー・メンバーとして参加します。このベスト盤に収められた②I've Been Lookin'での小気味よいストリングベンダーの演奏も是非聴いていただきたいです。

●House Of The Holy/Led Zeppelin
レッド・ツェッペリンの演奏の中で最もバーズを感じさせるのが、①The Song Remains The Sameです。ジミー・ペイジが奏でるストリングベンダーと12弦ギターに上述の"(Untitled)”の影響が出ていると言えるのではないでしょうか。



●Minute By Minute/Doobie Brothers
グラミー賞を受賞したドゥービー・ブラザーズのAOR的な本アルバムの中で、異色のナンバーと言えるブルーグラス・ナンバー(作者パット・シモンズの弁)、⑧Steemer Lane Breakdownでジェフ・バクスターのストリングベンダーを聴くことできます。



●Firefall/Firefall
フライング・ブリトー・ブラザーズのリック・ロバーツ、バーズのマイケル・クラーク、ジョジョ・ガンのマーク・アンデスらが結成したファイアフォールの本作の③Livin' Ain't Livin'では、ジョック・バートリーによるパーム・ペダルの演奏を聴くことができます。



●Luxury Liner/Emmylou Harris
エリック・クラプトンやスティーヴ・モーズと来日経験があるアルバート・リーはエミルー・ハリスの本作品で知名度を高めたと言えるでしょう。②Pancho&Lefty、⑥(You Never Can Tell)C'est La Vieで彼のストリングベンダーが聴けます。



●Dueling Banjos/Live At Kansas State/Earl Scruggs
ブルーグラス・バンジョーの始祖、アール・スクラッグスは後年に息子たちとカントリー・ロック・バンド、アール・スクラッグス・レビューを結成します。2イン1CDとして再発売されたこのアルバムに収録されている、ズバリのタイトルが付いた①String Benderではランディ・スクラッグスの明快なストリングベンダー演奏を聴くことができます。ストリングベンダー入門者にお勧めの楽曲です。



全て現行のCDというわけではありませんが、中古盤ショップ、ネットで根気よく探せば、出会うことは可能だと思います。次回はストリングベンダーの入手について書いてみたいと思います。

この記事を書いた人

白井 英一郎
1960年生まれ。勤続30年以上。吉田拓郎に憧れ12歳でギターを始める。スティール・ギター、バンジョー、マンドリン、ウクレレ、三線も演奏するマルチ弦楽器奏者。ウエスト・コースト・ロックとマーティン・ドレッドノート、フェンダー・テレキャスター、リッケンバッカー12弦ギター、ワイゼンボーンをこよなく愛する。ライターとしても活躍中で、伝説のムック「丸ごと一冊ヤマハFG」にも執筆。

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