【Vintage File】#23 Gibson 1968年製 J-45 Brown Sunburst ~半世紀前よりの使者~

Gibson アコースティックギター ヴィンテージ 中古楽器 特集
渋谷店佐藤です。
前回の【Vintage File】では、ギブソンマークシリーズというかなりの怪作を紹介させて頂きましたので、今回はあえて王道のモデルを紹介させて頂きます。

 

Gibson 1968年製 J-45 Brown Sunburst。
本コーナー2本目のJ-45の登場です。製造されてからもうすぐ半世紀。以前紹介させて頂いた1960年製の個体より8年後のものとなりますが、外見・内部構造共に変化していますので、順番に見ていきましょう。



グラデーションが美しい3カラーのブラウン・サンバーストカラー。1960年代のJ-45はチェリー・サンバーストが基本カラーですが、丁度1968年頃にブラウン・サンバーストの個体が出現し始めます。50年代末期に見られる通称「トライバースト」とは色合いがやや異なり、60年代後期のものの方が外周部の黒色の主張が強い印象です(個体によって塗装の具合はかなり異なる為、一概には言えませんが・・・)。



60年代中期以降のJ-45のアイコンと言える、ラージガード&所謂2リングのロゼッタ。ピックガードは60年代の中でも仕様の変化があり、60年代初頭はセルロイド製の薄手のラージガードだったのですが、1963年の中頃に厚手のプラスチック製のタイプに仕様変更となります。さらに1968年頃には本個体のようにGibsonロゴが描かれたものが出現。同時期にはネジ止めタイプのものも登場します。



アッパーベリーのアジャスタブル・ブリッジ&サドルです。J-45のブリッジ及び指板は丁度1965年頃を境にブラジリアン・ローズウッド(ハカランダ)からインディアン・ローズウッドへと徐々に切り替わっていきますが、本個体はブリッジはハカランダ、指板はインディアン・ローズウッドという過渡期ならではの仕様です。
本個体のブリッジは一度ブリッジピンの穴から1弦側の縁に向かう方向に横方向のクラックが入った形跡がありますが、現在はしっかり修理されており、使用に際して問題ありません。



個人的に推したい注目ポイントはこちら。ボディトップを良く見ると左右対称な継ぎ目があります。そう、本個体は4ピーストップ仕様です。60年代後半、J-45以外にもB-25等で4ピーストップの個体が散見されます。これはサンバーストや塗りつぶしのレアカラー仕様のモデルなどに見られる現象で、何故かJ-50やDove、B-25N等のナチュラルフィニッシュの個体には滅多に見受けられません(もしかしたら普通にあるのかもしれませんが・・・少なくとも私は実物を見た事がありません・・・。)外周部の継ぎ目が目立たなくなるサンバーストフィニッシュだから採用された仕様だったのでしょうか?
材供給が難しくなったためか、コストカットのためか、はたまた音響的なものを狙ったものだったのか、真相は不明です。しかしながら個人的な経験から言わせて頂くと、この時期の4ピーストップのJ-45とB-25、本個体も含め鳴りが良い個体が非常に多いです!荒々しくも適度に引き締まったバランスの良いトーンのものが多いというか・・・

*因みに、1944-45年の戦中期のJ-45をはじめとしたギブソンにも4ピーストップの個体が散見されます。こちらも戦時中の物資不足や、単純に仕様が定まらず色々作っていただけ・・・といった様々な説があります(この時代はトップのピース数どころかボディ材の種類やトラスロッドの有無まで定まっておらず、様々な仕様の個体が存在する事でも有名です)。
さらに30年代にもL-00に3ピーストップの個体が多く見られます。
しかしながら、こうした多ピーストップの個体、私観ですが、何故か鳴りが良い個体が多いというのが共通しています。こうしたギブソンのブレーシングやネックのジョイント、材構成には、2ピースのトップよりもこのような多ピース仕様の方が特性が合っていたのでしょうか?

 

内部です。ブレーシングは比較的背の低いノンスキャロップド・Xブレーシング。以前紹介させて頂いた60年製=50年代後期仕様の角ばった形状のブレーシングと比べると、幾分エッジ部分が丸みを帯びています。
センターシームにはモデル名と仕様を表す「J-45ADJ」のスタンプが確認できます。J-45は当時としてもギブソンアコースティックの中ではミドルクラスのモデルの為、J-200やHummingbirdに見られるようなラベルの貼り付けはありません。



J-45はこの直後の1969-70年にはスクエアショルダーボディ&ダブルXブレーシング仕様へとモデルチェンジが行われます。過去何度か特集させて頂いたように、70年代のギブソンアコースティックも楽器としては非常に面白いものなのですが、古きよきギブソン・トーン、ヴィンテージらしい定番スタイルのJ-45を求める方にとっては最後の世代と言えます。

特に60年代のアジャスタブル・サドル仕様のJ-45について「ジャカジャカ鳴らすのに向いたギターで、フィンガーピッキングやソロギターには向かないですよね?」とお客様から尋ねられたり、ネットや文献等で言われたりしている事も多いです。確かにギター自体の個性が強い年代ではありますが、個人的にはサスティーンが短くアタック感の強い「ボロンボロン」としたこの時期のJ-45の鳴りは指で爪弾いても何とも味が出ると思いますし、是非色々なジャンル/スタイルで活躍させてあげて欲しいと感じるギターです。

最近の中では珍しく?王道モデルを紹介した今回の【Vintage File】如何でしたでしょうか?

次回の【Vintage File】もどんな楽器が登場するのか、お楽しみに!

この記事を書いた人

佐藤俊太
渋谷店リユースマネージャー。普段は渋谷店に籍を置きつつ、イシバシ社内のエレキやベース、アンプ等含めた海外でのヴィンテージ楽器の買付も担当、定期的に渡米し現地のディーラー/コレクターと直接交渉を重ね買付を行っている。特にアコースティックギターに精通しているが、プライベートではパンクやガレージロック、ダークなアンビエント等を好み、愛器は1970年製Guild Bluesbird、モディファイした近年製SG Special、自作のストラト・タイプ、Mayonesの7弦などなど。個人的にはヴィンテージ/近年製問わずアクの強い楽器が大好物。はじめての楽器選びから一生モノとなるとっておきの1本まで、皆様の愛器との時間が最高のものとなるべく、精一杯お手伝いさせて頂きます。

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