【イシバシ三銃士のスーパーギター列伝・アーカイブス】第5回

Martin Takamine Taylor アコースティックギター イシバシ三銃士のスーパーギター列伝・アーカイブス
※この記事はイシバシ楽器メールマガジン2016年9月号「イシバシ三銃士のスーパーギター列伝」からの転載記事です。最新版はイシバシ楽器のメールマガジンにてご覧いただけます。



Q:10万円以内で買える、よく鳴るエレアコってどれですか?

A:鳴るかどうかはわかりませんが、いくつかオススメはあります。

イシバシ楽器渋谷店の佐藤です。

私の担当回では前回に続き、実際に店頭で皆様から頂く事の多い(時にきわどい)ご質問に率直に回答させて頂きます。

第2回は特に最近店頭で頂く事の多い、冒頭で挙げさせて頂いたご質問です。

そもそも、まず「鳴る」とはどういう事なのでしょうか?
突き詰めると哲学のような問いになってしまいますが…
店頭ではさらにざっくりと、お客様から試奏される前にいきなり「このギター鳴ってます!?」と尋ねられる場合もあり、この場合は実は(私は)結構困ってしまいます。
というのも「鳴るかどうか」≒「良い音かどうか」はプレイヤーのスタイルと好みによってかなり異なってしまうからです。

単純に音量が出るタイプのギターを「鳴っている」と言うこともできますし、フィンガースタイルで繊細に弾くタイプのプレイヤーなら、音量が出過ぎるよりも各音の輪郭・立ち上がりがはっきりしてバランスの良いタイプのギターの方が「鳴っている」と感じられる場合もあるでしょう。
さらに同じフィンガースタイルのプレイヤーでも、出音のバランスよりも音量=出力に余裕がありレンジの広いタイプのギターを好み「鳴っている」と感じられる場合もあるかと思います。

また、単純に「鳴る」=「ボディが響きやすい」とした場合、エレアコの場合は少し厄介な問題もあります。
アンプに繋いで鳴らす事を考えると、ボディが響きやすいという事はハウリングを起こしやすい要素となるためです。
Takamineなど、上位モデルであってもサイド板のみ合板で作るなど、あえて鳴りにくい作りで仕上げている節のあるブランドもあります(しかしながら、あえて鳴りにくい作りで仕上げているという事は、「ギターの鳴らし方を熟知している」… という事でもあります)。

以上のように、個体まで含めて「鳴るギター」とは何か? と考えると中々難しいモノがありますが、私は「鳴る」≒「どこかしら他のギターと比べて頭ひとつ抜けて優れているポイントがあり、かつそのプレイヤーが好きな要素がある」と解釈しています。
つまり「10万円以内で買えてよく鳴る」≒「10万円以上のギターに勝るとも劣らない優れたポイントがある、お買い得な」ギターと言えるのではないでしょうか?

本日はそんな優れたポイントを持つ、2016年9月現在、税込10万円以内で手に入れられるエレアコを3本紹介させて頂きます。

Martin 000X1AE




Martinの中ではベスト・バランスと評される事の多い000(トリプルオー)サイズの1本。

実はボディのサイド&バックは純粋な意味での木材ではなく、Martinが開発したHPL(ハイプレッシャー・ラミネート)という新素材。
木材を加工した時に出る削りかすをカーボンと混ぜ合わせ、高圧で圧縮した材です。
ネックも「ストラタボンド」と呼ばれる集積材を使用。
店頭でも偶に「どうせ接着剤まみれの安モノギターでしょ?」と言われてしまう事もありますが、実際に弾いてみると同価格帯のオール単板&1ピースネックのギターと張り合えるどころか、ちゃんと倍音成分が豊かで煌びやかさ・上品さを漂わせるMartinの音で個性を見せつつ鳴ってくれるのが凄いところです。
内部を見ると、要となるブレーシングはしっかりと無垢材で作られている等、環境保護やコストカットに取り組みながら、押さえるべきポイントはしっかりと押さえた作りである点が特筆に価します。
Fishman製のプリアンプユニット+ピックアップも搭載しており、エレアコとしても即戦力なのですが、どちらかと言うと「Martinらしい音でしっかり鳴ってくれる生ギターに、おまけでアクティブのピックアップが載っていますよ」というタイプでしょうか。

10万円を切る価格でしっかりマーチンサウンドを出すギターを作り出す辺り、私は正直な所D-28やD-45といったモデルよりもこのモデルの方がよっぽどMartinの凄さ…というより恐ろしさを感じます。

Taylor GS Mini-e ES2 All Koa




前述のMartinを追い抜いてアメリカNo.1売上アコギ・ブランドとなったTaylorの「秘密兵器」GS Miniの最新ピックアップ搭載モデルです。

まず生ギターとして見ると、分類的には約7/8サイズの所謂「ミニギター」にあたりますが、特徴的なアーチバック構造や元々ボリューム感のあるGS(グランド・シンフォニー)ボディをそのまま縮小させて事により、フルサイズのモデルに匹敵するほどボリューム感のある音で鳴ってくれるのが特徴です。
さらにピックアップに関しては最新のES2(エクスプレッション・システム2)を搭載。
つまりTaylorのフラッグシップモデルにあたる814ce(販売価格40万円台後半)と全く同じピックアップユニットを搭載しているのです。
ES2は分類上ピエゾながら全くピエゾらしくないエアー感のある音で出力できる点が素晴らしいのですが、出音のバランスの良いGS Miniとの相性も良く、ライブで持ち歩く頻度が多いプレイヤーにとっては、ミニサイズ故のポータビリティもあり、心強い味方となってくれるのではないでしょうか?

生ギターとしてもエレアコとしても、サイズ/クラスを超えた実力を持つ1本と言えます。

Takamine PTU131KC N




最後の1本は国産エレアコブランドの代表格Takamineの1本。

Takamineの中ではお手頃な価格帯のモデルですが、しっかりと日本製です。
生ギターとして「鳴るか」を考えると、先程のMartin 000X1AEとは対極の存在と言えます。
ボディはオール合板でサイズとしても小振りなため、生鳴りでボリューム感や豊かな倍音成分を味わって楽しむタイプのギターとは言えません。
しかし、だからといって単純に鳴らないギターというわけではなく、各弦ごとの粒立ちやバランスは非常に良く、やや硬質ながらしっかりしたサウンドを持っています。
何よりこのギターのポイントとしては評価の高いピックアップ/プリアンプと、抜群に握りやすいネック・グリップではないでしょうか?
こちらのモデルに搭載のCT-4BⅡ(PTU)プリアンプは、Takamineの中ではシンプルな仕様ですが、ブルース・スプリングスティーンらも愛用し、プロ・ユースにも耐えうる事で知られています。
ネックも指板エッジなどを見ると独自の形状をしており、肉厚感はあるのですが手の小さい方でも驚くほどスムーズに握れるシェイプとなっています。

生ギターとしての単純な音量/ボリューム感では先程のMartinなどに一歩譲るものの、抜群のプレイアビリティと高性能なプリアンプ/ピックアップにより、特にプラグ・インした際に「バンドの中でもしっかり鳴ってくれて使える!」と感じさせてくれるモデルと言えます。
先程のGS Miniもそうでしたが、オール・コア・ボディの美しく派手なルックスで、ステージでも目を惹くであろう1本です。

スペースの都合で今回は特に私が「鳴ってくれて使える!」と感じる3本のみ紹介させて頂きましたが、まだまだ他のブランドからも同価格で良いモデルがリリースされています。

イシバシ楽器渋谷店では、今回取り上げた3本は基本的に店頭にてお試し頂ける様ご用意していますので(在庫状況によっては欠品している場合もありますが…)、是非そのクラスを超えた実力を体感して頂き、皆様にとって最も「鳴っている」ギターを見つけて頂ければ幸いです。

大いなるギターワールドの旅に出かけよう!

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