【Vintage File】#28(最終回) Ampeg 1971年製 Dan Armstrong Lucite Guitar ~ステージで輝くクリスタル~

エレキギター ヴィンテージ 中古楽器 特集
渋谷店佐藤です。

前回紹介させて頂いたダンエレクトロ、如何でしたでしょうか?50年代から70年代にかけて、まだエレクトリックギターが登場し、ロックミュージックの流行が興って間もない時代であった為か、様々なブランドが試行錯誤してプロダクトをデザインしていた時代であり、フェンダーやギブソン、マーチンといった現代でも地位を保っている大手ブランド以外からも、様々な興味深いモデルがリリースされていました。

今回のGuitar Quest【Vintage File】でも、そうした時代に手がけられ、数多くのロックレジェンドに愛用された記録が残る1本を紹介させて頂きます。

 

Ampeg 1971年製 Dan Armstrong Lucite Guitar、通称クリスタルギターです。
今でこそ色々なブランドからアクリルボディのギターはリリースされていますが、このモデルが初めて世に出た1969年当時のインパクトは相当なものだったのではないでしょうか?

手懸けたのは当時スタジオ・ミュージシャン兼ギター・リペアマンとしてニューヨークで活動していたダン・アームストロング。元々ダンは1968年にアンプ・メーカーであるアンペグに招聘され、アンペグが所有するブランドである「Grammer(グラマー)」のフラットトップ・アコースティックギターの製造に対するコンサルタントを行う事を依頼されていたのですが、その製造ラインを見て一言、
「何故アンペグはアンプに関するノウハウを持っているのに、エレキギターではなくアコースティックギターにそんなに力を入れているんだ?アンプを売る為にもこれまでに無いエレキギターを作って一緒にアピールした方が良いんじゃないか?」
・・・かくしてこれまでに無い、他社のどのモデルとも異なる独創的なエレキ/ベースを作る事となります。
ボディはダン自身が気に入っていたとされるダンエレクトロのロングホーン・モデルのイメージに近いながらも、他のどのブランドとも似ていない独特なダブル・カッタウェイシェイプにてデザインされ、プロトタイプモデルの試作~デザインの煮詰めには当時若干20歳ながらも既にルシアーとして数々のギターのリペアや製作を手懸けていたマット・ウマノフ(Matt Umanov:現在ではニューヨークの老舗ヴィンテージギターショップのオーナーとしての方が有名でしょうか?昨年2017年12月に残念ながら楽器販売の業務を終了していますが、リペア・ショップとしては存続して活動・業務を続けています。)が参加しています。

試作を繰り返された後に世に出た本器はたちまち当時のミュージシャンの間で話題となり、キース・リチャーズやビル・ワイマン、ルー・リード、ジョー・ペリーらそうそうたるメンバーがステージで活躍させます。
しかしながら決して一般大衆向けではなかったためか、僅か2年余りで生産完了してしまいます。

 

ボディはその名の通りLucite=アクリル樹脂で成型されており、内部構造まで丸見えで、その素材故に見た目よりもずっしりと重量感があります。本個体の重量は4.27kgと、ベース並みの重さです。アクリル・ボディのギターは厳密に言えばアンペグより前の1950年代にフェンダーがボディだけでなくネックまでアクリル製のストラトキャスター(Lucite Stratocaster)をショー・モデルとして試作していましたが、製品として発表される事は無く、市販品として世に出たのはこのアンペグのLuciteギター/ベースが初です。

 

ヘッドストックです。3対3のペグ配列でヘッド角がついた戦前からの伝統的な弦楽器のつくりを踏襲しながらも、鋭角とカーブが上手く組み合わされた斬新でモダンなデザインです。トラスロッドカバーがヘッドシェイプと同じフォルムで作られているのもお洒落ですね。ペグは初期のシャーラー製で、ビスの位置がグローバーと同じ位置になっている点がポイントです。

それでは細部も見てみましょう。

 

透明なボディと並ぶこのギターのもう一つの特徴がこのカートリッジ型ピックアップです。
ビル・ローレンスも開発に加わっていたこのピックアップ、イレギュラーなものを除くと全7種類(Rock Treble, Rock Bass, Country Treble, Country Bass, Jazz Treble, Jazz Bass, Sustain Treble)のバリエーションが存在し、出したいサウンドに合わせすぐに交換できるようになっています。交換方法はボディ裏の固定用ネジを緩め、スライドさせるだけ。弦を緩めたりする必要も無く、最初からステージ上で使う事を想定してデザインされている事が窺えます。
本個体には7種類のバリエーションのうち唯一ハムバッキング仕様となっている「Sustain Treble」がセットされています。このPUは同時に「セラミックマグネットの使用」「ポッティング処理」が行われているハムバッキングPUとしては歴史上最初期のものでもあります。

 

ネックはアクリル樹脂のボディにボルトオンで固定されています。



1ピックアップながらボリューム、トーンノブに加え、3WAYのセレクタースイッチを備えています。スイッチには容量の異なる2個のキャパシタが繋がれており、トーン回路キャンセル/ハイカット/さらに深いハイカットと3モードの切り替えが可能です。



ブリッジ部分は木製の台座(ブリッジベース)に溝を彫り、フレット(?)と似たような形状のサドルを打ち込んだだけのシンプルな形状ですが、木製のブリッジベースの下部に金属製のパーツが敷かれ、そこに彫られたレールに沿ってブリッジベースが可動するようになっており、ある程度オクターブピッチの調整ができるようになっています。



さりげなく指板は木目が美しいブラジリアン・ローズウッド(ハカランダ)が使用されています。



Luciteは生産中止となってからもそのステージでの活躍から人気は根強く、多くのコピー・モデルが出ていた他、本家アンペグからは1990年代末にリイシュー・モデルがリリースされています。このリイシュー・モデルにはダンの息子でありピックアップビルダーとして知られるケント・アームストロングも関わっています。

オリジナル版はどちらかと言えば一般ユーザー向けに数を売る量販モデルというよりは、ステージで活躍するギタリストの為のスペシャル・モデルとしての性格が強かったモデルですが、随所に「これまでにない楽器を作ろう」とするこだわりを感じさせる1本ですね。

さて、最後に突然ではございますが、Guitar Quest【Vintage File】、今回が最終回となります。2016年6月に開始してから約1年と9ヶ月、ご愛読頂き誠にありがとうございました。
今後もヴィンテージに限らず、楽器についての面白い情報をお届けできるようなコンテンツを考えて参ります。また何処かでお会いできれば幸いです。

それでは、また!

この記事を書いた人

佐藤俊太
渋谷店リユースマネージャー。普段は渋谷店に籍を置きつつ、イシバシ社内のエレキやベース、アンプ等含めた海外でのヴィンテージ楽器の買付も担当、定期的に渡米し現地のディーラー/コレクターと直接交渉を重ね買付を行っている。特にアコースティックギターに精通しているが、プライベートではパンクやガレージロック、ダークなアンビエント等を好み、愛器は1970年製Guild Bluesbird、モディファイした近年製SG Special、自作のストラト・タイプ、Mayonesの7弦などなど。個人的にはヴィンテージ/近年製問わずアクの強い楽器が大好物。はじめての楽器選びから一生モノとなるとっておきの1本まで、皆様の愛器との時間が最高のものとなるべく、精一杯お手伝いさせて頂きます。

Category