『D-45譲りの倍音豊かなサウンドを持つ、コスト・パフォーマンスに優れた名機』

Martin アコースティックギター
白井です。いつもGuitarQuestをご覧いただき誠にありがとうございます。
本文に入る前にご報告がございます。8年弱勤務しておりました池袋店から御茶ノ水に新規オープンのHarvest Guitarsに異動が決まりました。GuitarQuestの私が担当するコーナーで投稿してきたフォーク、70年代、ブルーグラスなどといったキーワードに沿ったアコースティック・ギター・ショップです。ご期待くださいませ。
池袋店で出会ったお客様とお別れするのは名残惜しいですが、機会があればHarvest Guitarsにもお立ち寄りくださいませ。十数年ぶりの御茶ノ水エリアの店舗へのカムバックとなりますが、心機一転の意気込みで取り組みたいと思っております。Harvest Guitarsをよろしくお願いいたします。

さて本題に移りましょう。マーティンのスタンダード・シリーズを紹介第四弾です。D-35に続いて今回はD-41を取り上げてみます。何を隠そう筆者も所有するモデルです。

D-45の廉価版として登場




↑筆者所有の1974年製D-41。

D-41の登場はD-35よりさらに遅く1969年です。翌1970年にカタログに掲載されるようになりました。最上位機種D-45の廉価版的な位置づけのモデルです。当初はポジション・マークの数を減らして、ボディのアバロンの装飾をトップ周囲と口輪のみとし、サウンド・ホールの位置をD-28などと同等の位置にしたことが、D-45との外見上の違いでした。なお1987年より、現行のモデルのように1フレットと17フレットにもポジション・マークがつくようになりました。ポジション・マークはD-45の7/8にサイズ・ダウンしていますが、遠目にはD-45っぽく見えるようになりました。

より厳選された材で作られたD-45は圧倒的なボリュームとサスティンを誇ります。D-41はD-28と同等のボリューム、サスティンと言えます。それでも十分な音量です。そして音色はD-45譲り。倍音が豊かでクリアな印象を受けます。D-45のボリュームに歌が負けてしまうという話をうかがうことがあります。歌とのバランス面での取り回しの良さという点では、D-41に軍配が上がるかもしれません。

ボーカルを際立たせるサウンド


D-41のユーザーとしては、邦楽ではオフコースの小田和正、鈴木康博が知られます。鈴木さんには弊社のエイジ・プラス・クラブ(当時)のイベントに出演いただいたことがあります。そのとき、オフコース時代に使用していたD-41をお持ちいただきました。さすが長らく使用されていただけあって大変良く育っており、D-45を思わせる(もしくはそれ以上の)ボリュームを持ち合わせていました。D-41も弾きこめばここまで鳴るようになるということを実感しました。

また近年、スタジオ・ミュージシャンの安田裕美もD-41を使用。安田さん自身のSNSでも記述されていた通り、当池袋店にてご購入いただいた物です。安田さんがD-41を購入に至るきっかけは、筆者だったとか。筆者がD-41を購入した記事をプライベートなSNSに挙げたのをご覧になり、D-41が欲しくなったそうです。光栄なお話です。

洋楽のユーザーとしては、アメリカのジェリー・ベックレー、シンガー・ソングライターのダン・フォーゲルバーグが愛用していました。エレアコに移行する以前のアメリカのステージでは、ジェリーのメイン・アコースティック・ギターはD-41でした。ダン・フォーゲルバーグはD-45も使用していましたが、ダンのシグネチャー・モデルはD-41がベースとなっていました。またジョニ・ミッチェル、グレアム・ナッシュ、ジャクソン・ブラウン、ボブ・ディランもD-41を使用していたことがあります。D-35同様、「歌モノ」アーティストが好む傾向にあると言えるでしょう。



↑左はダン・フォーゲルバーグ、右はアメリカのDVD。前者はコンサートの模様を収録、後者はスタジオ・ライブです(ともに輸入盤)。どちらもD-41が登場します。アメリカの方では、ヒット曲「ヴェンチュラ・ハイウェイ」などでD-41の使用の確認ができます。

上述の通り、筆者もD-41オーナー。現在メインで使用しています。ギターを始めたばかりの小僧のときは、マーティンのギターを手にとって比較することなどできませんでした。カタログを眺めているだけでは、当時のポジション・マークが少ないD-41は正直なところ中途半場な印象でした。しかしながら、上述のジェリー・ベックレーやダン・フォーゲルバーグが使用しているのを知って、興味を持つようになりました。イーグルスのグレン・フライに憧れてD-28を購入し、アメリカやダン・フォーゲルバーグを聴いてD-41を購入。ミーハーな私です。次はいよいよCSNYのD-45でしょうか。(笑)

D-41の倍音豊かなサウンドには癒しを覚えます。縦ロゴ、アバロンのインレイに持つ喜びも感じます。演奏しないで、眺めているだけで楽しい楽器です。とっておきの一本となりました。

2018年仕様


今年D-41も仕様変更がありました。D-28同様、エイジング・トナー、オープン・ペグが外見上の目立った変更点です。戦前に存在しなかったD-41が戦前のギターのような雰囲気を持つようになりましたが、これはこれで悪くはありません。近年の製品は、ポジション・マークは小ぶりですがD-45と同じポジションにインレイされており、今回の仕様変更により戦前のD-45に似たルックスになったと言えそうです。ブレースは元々近年のD-41はスキャロップ加工されたものが採用されていましたが、2018年からフォワードシフテッド・スキャロップ仕様となりました。筆者は残念ながらまだ新仕様の実機を触っておりませんが、仕様を見る限り、旧タイプと比較して、より広がりのある、軽快な音色になったと想像しています。



↑2017年までのD-41。

 



↑2018年仕様のD-41。

いかがでしたでしょうか。歌との相性でギターをお探しの方に、前回ご紹介したD-35とこのD-41をお試しいただきたいと思います。

それでは次回もご期待ください。


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この記事を書いた人

白井 英一郎
1960年生まれ。吉田拓郎を聞いてフォーク・ギターを始める。その後イーグルス、オールマン・ブラザーズ・バンドなどのアメリカン・ロックに傾倒。エレキ・ギターも弾くようになる。ギター、スティール・ギター、バンジョー、マンドリン、ウクレレ、三線を弾くマルチ・プレイヤーとして演奏活動をする現役ミュージシャンであり、音楽誌や楽器専門誌のライターの肩書きも持つ。1970年代のファッションを好み、音楽のあるスローライフを実践するロハス・ピープル。入門者からベテランまで、お客様の音楽スタイルはもちろん、ライフスタイルに合った商品を提案する楽器のコンシェルジュ。

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