レコード・ジャケット、音楽誌、ツアー・プログラムに見る70年代ミュージシャンのアメカジ・ファッション

その他 アコースティックギター
先月末に池袋店から御茶ノ水本店Harvest Guitarsに転勤となりました白井です。去る4月28日に、大人の方向けのアコースティック・ギターのセレクト・ショップとして誕生したHarvest Guitarsですが、おかげさまでオープンより大勢のお客様にお越しいただいております。この場を借りて御礼申し上げます。ありがとうございます。

さて、ニール・ヤングの1972年発売の名盤『ハーヴェスト』から名前を拝借した当Harvest Guitarsは、1970年代の雰囲気を意識しています。スタッフのユニフォームもアメカジがテーマです。私の場合、トップスはチェックのシャツ、ボトムスはジーンズ、レザーのブーツです。私にとっては、これらはステージ衣装でもあり、普段着でもあるファッション・スタイルなので、全くオンとオフの差が無くなりました。(笑)

1970年代から定着したアメカジは当時の音楽の流行と無縁ではありません。中でも西海岸系のアーティストの多くはアメカジ・ファッションでした。もちろん、当の本人達は「アメカジ」という言葉は知らないですし、意識して選んで着ていた衣装ではないはずですが…。今日は楽器の話題を離れて、70年代半ば以降のライフ・スタイルを象徴するそんなファッションをテーマに取り上げましょう。

最近の男性誌を見ると、アメカジ、そして西海岸というワードが復活した印象がありますが、アメカジが定着したのには1975年発売の『メイド・イン・USAカタログ』、そして1976年創刊の『ポパイ』の影響力が大きかったと言えましょう。そして西海岸ブームの最中の1981年、リンダ・ロンシュタット、ジェイムズ・テイラー、J.D.サウザー、ローニンと言う、当時の西海岸サウンドの人気アーティストが横浜スタジアム、甲子園スタジアムに集結する『ザ・カリフォルニア・ライブ』という大イベントがありました。そのプログラムには、当時イーグルス、リンダ・ロンシュタット、ジャクソン・ブラウンを抱えるワーナー・パイオニアの松林天平が司会を務め、音楽評論家で西海岸のロックの啓蒙に尽力した小倉エージ、『メイド・イン・USAカタログ』、『ポパイ』を手掛けた石川次郎の対談がありました。西海岸ロックの仕掛け人とアメカジの仕掛け人の対談は興味深いものがありました。

『メイド・イン・USAカタログ』や『ポパイ』の読者層が大人になって、青春時代のアメカジに戻ってきているような気がします。青春時代に憧れたアメリカン・ブランドのギターに対する情熱が蘇ってくるのと、原点は一緒かも知れません。




↑『ザ・カリフォルニア・ライブ』プログラム表紙。今となっては、小倉エージ、石川次郎の対談は貴重です。




↑最近私が購入した男性誌『Free&Easy』、『Fine』、『Safari』。私たちの世代にとっての懐かしのアメリカン・ファッションも登場します。






↑日本のフォーク・ブームの火付役、吉田拓郎はヒット曲「結婚しようよ」(画像上)のジャケットでデニム地のウエスタン・シャツを着ていました。アルバム『伽草子』(画像下)のジャケットではチェックのネル・シャツを着ています。西海岸ブームの前からアメカジを取り入れていた吉田拓郎はさすがです。






↑洋書”CROSBY, STILLS, NASH&YOUNG:THE VISUAL DOCUMENTARY”から。1960年代はお洒落な恰好のCSN(画像上)。ゲットしたばかりの再生産型D-45が眩しいですね。そんな彼らも70年代に入るとラフなアメカジ・ファッションです(画像下)。ギターは高価なD-45でも、ファッションがカジュアルというのが恰好よく感じました。






↑サザン・ロックを代表する二つのバンドのアルバム・ジャケットから。オールマン・ブラザーズ・バンドの名ライブ盤『アット・フィルモア・イースト』(画像上)とレーナード・スキナードのファースト『レーナード・スキナード』。ベルボトム・ジーンズをきめています。私も中学、高校の頃はベルボトムでした。




↑『プレイヤー』77年2月号の表紙はリトル・フィートのロウエル・ジョージ。ラージ・ヘッドでリアにテレキャスターのピックアップを装備したストラトを抱えるロウエル、ウエスタン・シャツとストロー・ハットが決まっています。私もストロー・ハットをゲットしましたが、ダイナ・コンプとフェイズ90を繋いでスライドを弾くことはあっても、日常でストロー・ハットをかぶる勇気はありませんでした。




↑同じく『プレイヤー』の77年9月号の表紙に登場したイーグルスのドン・フェルダーはド定番と言えるチェックのシャツ(ウエスタン・シャツ)。退色して渋みを感じさせる59年製レスポールとシャツの柄がマッチしています。私もこんな恰好で「呪われた夜」のソロを決めたいです。




↑78年発売の『リンダ・ロンシュタット・ソング・ブック』(シンコー・ミュージック)からリンダとジャクソン・ブラウンとイーグルスの共演の写真。リンダ以外はアメカジですね。伝説のドン・カーシュナーのコンサート(1974年)の「テイク・イット・イージー」を共演したときの模様でしょう。




↑イーグルスのサード・アルバム『オン・ザ・ボーダー』に付録したポスター。ジョシュア・トゥリー砂漠とアメカジが似合います。バーニー・レドン(左から二人目)、グレン・フライ(右端)はデニムのトップスがきまっています。




↑洋書”California Rock, California Sounds”より。伊達サングラスを額にかけるイーグルスのグレン・フライ。伊達サングラスも基本でした。




↑同じく”California Rock, California Sounds”より。サーファーでもあるジャクソン・ブラウンはアロハも似合います。




↑同じく”California Rock, California Sounds”より。3人時代のアメリカ。Tシャツとジーンズという当たり前のファッションも70年代に定着しました。




↑1979年に初来日を果たしたリンダ・ロンシュタットのツアー・プログラムから。ドジャーズのスタジャン、ローラー・スケートが当時の西海岸を象徴していました。




↑1979年に二度目公演をおこなったイーグルスのツアー・プログラムから。さりげなくアメカジが決まっています。アロハ・シャツと白いパンツのドン・フェルダー(前列右)がお洒落ですね。




↑同じくイーグルスの1979年のツアー・プログラムから。「ホテル・カリフォルニア」のツイン・リードをきめるドン・フェルダー(左)とジョー・ウォルシュ(右)。ギター・プレイもコピーしましたが、ウエスタン・ブーツとブーツ・カットのジーンズも真似たものです。




↑1980年のJ.D.サウザーのツアー・プログラムから。アルバム『ユーアー・オンリー・ロンリー』のジャケットではネクタイ姿を披露してダンディさを打ち出したJ.D.ですが、ここではチェックのウエスタン・シャツ姿です。




↑1981年のジャクソン・ブラウンのツアー・プログラムからツアーのクルー達のカット。アメカジのオンパレードですね。




↑マニアックな雑誌『ベアバック』18号の表紙。アロハ・シャツ姿のライ・クーダーに憧れたものです。




↑1988年のニール・ヤングのツアー・プログラムから。ニール・ヤングの定番と言えるチェックのシャツです。


振り返ってみると、私の場合、自由に使えるお金がわずかだった学生時代はファッション誌をほとんど買うことはなかったです。しかしながら、憧れのミュージシャンを通じてこういったファッションに目覚めていったのでした。

1970年代のミュージック・シーンを象徴するマーティン、ギブソン、フェンダーといったアメリカン・ブランド製品には、やっぱりアメカジが似合います。バドワイザーやアーリータイムスを呑みながら、アメリカン・ギターを楽しむ至福の時間、そしてアメリカ風のライフスタイルを、是非とも皆さんと共有したいと思っています。

敬称略

この記事を書いた人

白井 英一郎
1960年生まれ。吉田拓郎を聞いてフォーク・ギターを始める。その後イーグルス、オールマン・ブラザーズ・バンドなどのアメリカン・ロックに傾倒。エレキ・ギターも弾くようになる。ギター、スティール・ギター、バンジョー、マンドリン、ウクレレ、三線を弾くマルチ・プレイヤーとして演奏活動をする現役ミュージシャンであり、音楽誌や楽器専門誌のライターの肩書きも持つ。1970年代のファッションを好み、音楽のあるスローライフを実践するロハス・ピープル。入門者からベテランまで、お客様の音楽スタイルはもちろん、ライフスタイルに合った商品を提案する楽器のコンシェルジュ。

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