リニューアル版D-35をご紹介

Martin Martin アコースティックギター
Harvest Guitarsの白井です。前回に続きリニューアルしたマーティンのスタンダード・シリーズをご紹介しましょう。

D-35は今年(2018年)3月に取り上げたばかりですが、実際に新しいD-35が入荷しておりますので、実機を確認しながら改めて取り上げたいと思います。一部3月の投稿と重複する内容もありますが、ご了承くださいませ。



↑カントリー、ブルーグラスの定番スタイル、ドレッドノート・サイズのボディを持ちながら、フォークの世界で人気を博したD-35。

D-35は1965年に誕生したモデルです。当時流行していたモダン・フォークの歌唱スタイル、アンサンブルにマッチさせるべく、トップのブレース(力木)のサイズを1/4”と僅かに薄くしたのが特徴です。5/16”のブレースを採用するD-28は、ブルーグラス・バンドでバンジョー、マンドリン、フィドルといったラウドな楽器と互角に張り合える力強さがありますが、フォーク・ソングの伴奏ではそこまでのボリュームを要求されない場合があります。むしろ主役を食ってしまうこともあります。D-35の軽快なサウンドは、歌に寄り添う伴奏に威力を発揮します。

D-35は3ピースのバックが採用されています。発売当時、サイド&バックに使用していたブラジリアン・ローズウッドが枯渇し始めていたため、材の節約のためバックを3ピースとしたのです。この3ピースのバックは1970年代にインディアン・ローズウッドへ以降した後も引き継がれましたが、ファッション的な要素が強くなりました。D-28にはなかったネックのバインディングとともにD-35の外観上の特徴となっています。



↑D-35に始まった3ピース・バックはデザイン的に流行しました。



↑ネックにもバインディングがついたD-35ですが、D-35はサイドのバインディングも少し凝っています。サイド方向にもマルチ・プライとなっているのです。ブレースのサイズとともに、意外と知られていない事実です。

さて、最新のD-35ですが、リニューアルした主なポイントを挙げてみましょう。

まず、D-28同様トップ・ブレーシングがフォワード・シフテッド(ネック寄りに移動)となりました。ただし、最新の000-28はスキャロップド加工が施されましたが、D-35はD-28同様ノン・スキャロップドです。旧仕様の物と比較すると音色が幾分柔らかく明るくなった印象があります。



↑サウンドホールを覗くとすぐ近くにブレースのXパターンの中心が見えます。フォワード・シフテッドならではです。一般的にレギュラーのXブレーシングの方が幾分引き締まった音、フォワード・シフテッドXブレーシングの方が広がりのある音になる傾向にあります。このD-35もその例に漏れないようです。

ネック・グリップは他の新しいスタンダード・シリーズのモデル同様、モディファイド・ロー・オーヴァルとなりました。現代的な演奏スタイルにマッチした薄型のネックです。スクエア・ロッドが採用されていた時代のマーティン製品は、ネックが太めで出荷時の弦高も高めでした。人によっては、演奏しづらいと感じられたかもしれませんが、現在のスタンダード・シリーズは演奏性が向上しています。コンテンポラリーなエレアコに馴染んだ若い世代の方にもスムーズに受け入れられると思います。そして、握力に自信がなくなってきた中高年にとっても優しいネックと言えるでしょう。

そして、トップの塗装がエイジング・トナーへ、ピックガードがベッコウ柄へ、ヘッドのロゴがデカールへとヴィンテージ・テイストを感じさせる外観となったのも、新しいスタンダード・シリーズの共通の変更点です。しかしながら、一つ例外的なのが、糸巻には旧製品同様グローヴァーのロトマティック・タイプが採用されたことです。D-35より後の1969年に生産が開始され発売以来ロトマティック・ペグを貫いたD-41が、今回のリニューアルでオープン・ギアのペグとなったことを考えると興味深いですね。マーティンと言えばグローヴァー・ロトマティックとおっしゃる70年代ファンも納得です。外観はD-35が発表された1965年当時に戻った印象があります。



↑ヴィンテージに色焼けを再現したエイジング・トナーによるトップ・フィニッシュとベッコウ柄ピックガードが確認できます。



C.F.Martin&Co.のロゴは縁取りのあるデカール・ロゴに戻りました。



ペグは半円形のツマミが特徴のグローヴァー102が引き続き採用されました。なお、D-28についているネック裏のボリュートはD-35にはありません。

マーティン・スタンダード・シリーズのリニューアルは、モデルによって変更点が異なります。D-35に関して言えば、発売当時に戻ったような外観となり、音色も多少の変化はあるものの、000-28のような大胆な仕様変更ではありません。

実機を試しました。紛れもないD-35サウンドなのですが、軽快さが増した印象があります。抜けが良く、かと言って繊細になりすぎず、一定の音圧を感じせてくれます。そのほど良いバランスが魅力です。アンサンブルの中でも存在感を誇示するでしょう。歌の伴奏のみならず、フィンガー・スタイルのインストゥルメンタルなどにも十分お使いいただけるでしょう。ジャンルを問わず使える実力を感じます。様々な演奏スタイルの方に是非お試しいただきたい一本です。

次回はD-41を取り上げる予定です。ご期待くださいませ。

この記事を書いた人

白井 英一郎
1960年生まれ。吉田拓郎を聞いてフォーク・ギターを始める。その後イーグルス、オールマン・ブラザーズ・バンドなどのアメリカン・ロックに傾倒。エレキ・ギターも弾くようになる。ギター、スティール・ギター、バンジョー、マンドリン、ウクレレ、三線を弾くマルチ・プレイヤーとして演奏活動をする現役ミュージシャンであり、音楽誌や楽器専門誌のライターの肩書きも持つ。1970年代のファッションを好み、音楽のあるスローライフを実践するロハス・ピープル。入門者からベテランまで、お客様の音楽スタイルはもちろん、ライフスタイルに合った商品を提案する楽器のコンシェルジュ。

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