【Vintage File】#21 Fender 1968年製 Telecaster Paisley Red ~サイケデリック・ジェネレーション~

渋谷店佐藤です。
台風が通り過ぎ、一気に肌寒くなってきた今日この頃、如何お過ごしでしょうか?
今回のGuitar Quest 【Vintage File】では、そんな寒気を吹き飛ばすかのようなホットな逸品を紹介させて頂きます。

⇒過去の【Vintage File】記事はこちら

 

Fender 1968年製 Telecaster Paisley Red。
フェンダー・テレキャスターは、ご存知の通り史上初の市販ソリッドボディ・エレクトリックギターとしてエレキギターの歴史の基礎を築いたモデルですが、年式が進むにつれ各部の仕様がアップデートされており、さらに様々なバリエーション・モデルやスペシャルな仕様のモデルがリリースされてきました。
今回紹介させて頂く個体も、そういったスペシャル仕様の1本。ペイズリー・レッド(通称ピンク・ペイズリー)カラーの本仕様は、1968年当時のサイケデリック/フラワームーブメント全盛期により当時の流行にのっとって登場したものです。同時にリリースされていたブルー・フラワー・カラーと共に登場しながら、僅か2年弱程しか生産されなかったレアな仕様ながら人気が高く、現在に至るまでFender JapanやCustom Shop等でも幾度と無く復刻されてきました。
著名なアーティストの中では、ジェームズ・バートンがエルヴィス・プレスリーのステージ・バンド時にエルヴィス自身の薦めもあり愛用した事で知られています。

それでは、順番に各部を見ていきましょう。

 

見るものを圧倒する絢爛なペイズリー・レッド・カラー。ボディに描かれている花柄は塗料で木部にペイントされているわけではなく、柄がプリントされた専用のシートをボディのトップとバックに貼り、その上からクリアコートを吹いているものです。

 

 

ボディの塗装の他、前述のシート(壁紙)も経年で色合いが変化し、部位によってはゴールドメタリックや、下地が見えてシルバーメタリックに近い色合いにまで変化しています。見る角度や光の当たり具合によって様々な表情・鈍い輝きを見せる、何とも味のあるルックスです。
ボディのトップ・バックとサイドを見比べると、塗膜の間に壁紙があるか否かで、ウェザー・チェックの入り方が全く異なっているのがわかります。

 

ヘッドストックのロゴは黒字に金縁の所謂モダン・ロゴ。ネックグリップは長年のプレイで表面の塗装が剥がれ落ちている事もあり、適度に握り応えもありつつも手のひらに吸い付くような非常にスムーズなグリップ感が特徴です。

 

ネックデイトは1968年9月3日。1968年はピンク・ペイズリー生産初年度にあたりますが、同時に貼りメイプル指板の初年度にもあたり、本器はファースト・イヤーづくしの1本と言えます。
生産本数の少ない貴重なヴィンテージでありながら、本器は楽器としてしっかりと弾かれてきた形跡があり、それは指板の表面の塗装の剥がれ具合・色の変化からも見てとれます。

ネックポケット部です。うっすらとですがハンドル跡と作業時のサインが確認できます。ピンク色の塗装もこの箇所は比較的色濃く残っています。

 

ペイズリー柄のグラフィックが見えるよう、ピックガードは透明になっています。しかしながら、フロントPUキャビティ周辺のザグリ穴や配線を隠す意図で、PU周辺のみピンク色の塗料が吹かれているのが特徴です。

 

キャビティ内に収められたコントロール・アッセンブリです。テレキャスターの配線は丁度この直前の1967年頃から「フロントPU←フロント+リアの並列→リアPU、コントロールはマスターVOL&TONE」の現代でも馴染みのある所謂モダン・ワイヤリングとなっており、本器もその仕様となっています。トーンキャパシタの抵抗値は1MΩとなっており、ボリュームポットにハイパス用のキャパシタが付いている事も確認できます。
作業した職人さんの名前でしょうか?キャビティ内にアルファベットのスタンプが確認できます。

リアピックアップのプレートを開けている所です。テレキャスターのリアPUは底面の金属プレートを開けた所=ボビン底部にデイトの記載があるのですが、上手く金属プレートをずらさないとアース用の配線や、最悪な場合はコイルの導線を切ってしまう危険があります。以前紹介したジャガー同様、ビビりながら慎重に作業しなければならない嫌なポイントです・・・。

ブリッジサドルは、やはりこの時期に採用され始めたステンレス製のものとなっています。

 

ネックまわりと並び、本器がしっかりと楽器として弾かれてきた事を示すポイントです。ボリュームノブ付近のプレートに表面のメッキが著しく劣化している箇所があります。ボリュームノブを操作する際に丁度小指が当たる箇所です。ここまで劣化が進む程演奏中に頻繁にボリュームノブを操作してきたということは、ある程度以上熟練したプレイヤー(もしくはよほどボリュームノブをいじくるのが好きな変わった方?)によってしっかりステージで弾かれてきたのではないのかと推察されます。
本器にはブリッジカバーも付属していますが、同様に手のひらが当たる箇所のメッキが劣化しているのが確認できます。

ケースはノン・オリジナルですが、同時期~70年代にかけて使われてきたブラック・トーレックス・ケースが付属します。

ピンク・ペイズリー&ブルー・フラワーの特別仕様テレキャスターは、翌1969年に生産中止となりますが、前述の通り後年何度も様々な形で復刻されています。最近ではピンクペイズリー+サンバーストのマルチ・レイヤー仕様ストラトキャスター等でもフィーチャーされており、一時代のフェンダーを象徴するギターのカラーリングとして認知されています。
本器はがっつり弾かれてきた個体ではありますが、現在も現役の楽器としてしっかり使えるコンディションを保っていますので、眺めて良し、ステージで活躍させて良しの逸品と言えるのではないでしょうか?

次回の【Vintage File】もお楽しみに!

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