【イシバシ三銃士のスーパーギター列伝・アーカイブス】第9回

※この記事はイシバシ楽器メールマガジン2017年1月号「イシバシ三銃士のスーパーギター列伝」からの転載記事です。最新版はイシバシ楽器のメールマガジンにてご覧いただけます。


メールマガジンをご覧の皆さま、今月も様々なギターの魅力をご紹介する「イシバシ三銃士のスーパーギター列伝」のお時間がやってきました。
今回は私ルーク居波が素晴らしきフェンダーの世界に皆様をご案内します!

世界中のギタリストを魅了して止まないフェンダーギター。
ストラトキャスターやテレキャスターなどは今も尚、形を変えず時代を超えて様々な人々、音楽、文化に影響を与えています。
そんな数々のすばらしいギターの中でも私がもっとも愛するギター、それは「ジャズマスター」です。

2016年8月号のギターマガジンにて突如として一冊すべてジャズマスターの特集が組まれました。
ストラトキャスターやテレキャスターの特集は今まで何度もあれど、ジャズマスターの特集本は非常に珍しく貴重でした。
そういう私も発売日に保管用と仕事用で二冊購入し、胸を躍らせたのは記憶に新しいです。
最近ではジャズマスターを使用する若いアーティストも増え、フェンダーギターの中でも確固たる地位を築いたように思います。

さて今回は先日都内某所で行われたフェンダーカスタムショップ大選定会にて各楽器店の引き合いを制し、見事買い付けに成功した特別なジャズマスターのご紹介です。

1958年に当時のフェンダー最上位機種として発表されたジャズマスター。
それまでにあったストラトキャスターやテレキャスターを流用したものではなく、ボディ・ネック・アッセンブリなど、全く新しいアイデアに基づきデザインされたのです。

そもそも50年台後半のジャズシーンではフェンダーは非常に苦戦を強いられており、テレキャスターやストラトキャスターのエッジの効いたサウンドは当時のジャズミュージシャンにはあまり好まれず、ギブソンが主流だったようです。
そんなギブソン一人勝ちの状況を打破するべくレオ・フェンダーが投入したのが名前の通り、ジャズマスターなのです。

座って弾くことの多いジャズミュージシャン向けの左右非対称のオフセットウェスト・コンターボディには、P-90に近似した構造のオリジナルピックアップをマウントしています。
ビグスビーライクなマイルドなかかり方が魅力のフローティングトレモロ、ソロパートとリズムパートでボリューム、トーンを瞬時に切り替えられるプリセットサーキットを搭載。
後にサーフミュージックをターゲットに発表されたジャガーは24インチ・ショートスケールですが、ジャズマスターはストラトキャスターと同じ25 1/2インチ・ロングスケールで、ハリのある甘い音色に貢献しています。

ジャズマスターが発表になった1958年の夏頃、同時期に発行されたフェンダーのカタログに最終型プロトタイプが掲載されております。
ゴールド・アノダイズド・アルミ・ピックガード、テレキャスター同様の円柱形コントロールノブ、黒いピックアップカバーが特徴的です。
同年に発売されることになる初年度のジャズマスターではゴールド・アノダイズド・アルミ・ピックガードはそのままですが、白いピックアップカバーや白いストラトノブに変えられており、この仕様が世に出ることはありませんでした。

本器はそんな歴史を持つジャズマスターの中でもカタログにしか掲載されていない幻のプロトタイプモデルを現代風に再現した限定モデルなのです。

ネックは適度な厚みで多くのマスタービルダーにも定評のあるMid 60sオーバルCシェイプネックを採用。
指板ラディアス9.5”R、ミディアムジャンボフレットを採用し、ヴィンテージテイストながらも使い勝手の良いモダンな一本に仕上がっております。

またボディ材には軽量なアッシュ材を使用、重量3.49kgと軽い個体でストレス無く演奏が可能です。
ピックアップにはHandwound Jazzmaster PU×2を搭載、アッシュボディとの組み合わせも抜群で抜けの良いジャキジャキとした音の中にもジャズマスターらしい太さ、甘さを持ち合わせています。

ボディには全体に適度な経年加工が施されたCloset Classic仕上げ、退色した色を見事に再現したフェイデッドサンバーストフィニッシュで仕上げられており、落ち着いた雰囲気を醸し出します。

最大の特徴でもあるブリッジには、テレキャスターを思わせる2サドルのRSD J-Bridgeを採用。
RSD J-Bridge のRSDは、「Research Special Division」の略で2013年より登場した新しいブリッジです。
開発者はマスタービルダー、スコット・ビュール。
ギター製作ではまだまだ知名度はないビルダーですが、ビルダーのためのジグや工具を製作するなど裏方の職人だった人物です。
90年代フェンダーカスタムショップ立ち上げ時には様々なレギュラーカスタムモデルのプロトタイプを、オリジナルハードウェアに至るまで全て彼が製作し製作ラインに載せており、いわばカスタムショッププロダクトの土台を作り上げてそれを支えてきた人物と言えます。

RSD J-Bridgeは質量のあるブラスサドルならではの太く芯のあるサウンドをアウトプットすると共に1本1本の弦をしっかりとサドルの溝に乗せることにより、ジャズマスター特有の弦落ちを防ぎます。
今後彼の手から革新的なアイデアが次々と生まれると思うとフェンダーの未来が楽しみでしょうがありません。

2016年の限定モデルですので気になる方はお早めにお問い合わせくださいませ。
自信を持っておすすめできる極上の一本でございます。

さあ大いなるギターワールドの旅に出かけよう!

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