ライブ派のエレアコ&ピックアップ選び

Cole Clark Ovation Takamine Taylor YAMAHA アコースティックギター エレアコ 特集
楽器を演奏してミュージック・ライフをエンジョイしている池袋店の白井です。私は月に2、3回ペースでライブ演奏活動をおこなっております。演奏場所はミュージック・バー、カフェから、ライブ・ハウス、ホール、屋外ステージまで様々ですが、そんな演奏経験から、今回、次回と二回に分けて、ライブ演奏の観点からエレクトリック・アコースティック・ギター(以下エレアコ)とアコースティック・ギター用のピックアップについて書いてみたいと思います。

エレアコか、後付けピックアップか


かつて、アコースティック・ギターをライブ・ステージで拡声するにはボーカル同様マイクを使う以外に方法がありませんでした。しかしながら、エレアコや専用ピックアップ・システムが進化、普及し、現在ではマイクを使うより、エレアコやピックアップを取り付けたアコースティック・ギターを使うのが一般的となりました。近年では、ライブ・ハウスによってはアコースティック・ギターをマイクで集音する準備がなく、エレアコやピックアップ付きのアコースティック・ギター持ち込みが必須というケースもあるくらいです。

臨場感あるサウンドを求めるならマイクで集音するに越したことがありませんが、エレアコやピックアップ付きのアコースティック・ギターには、セッティングやサウンド・メイキングの利便性、ハウリングの軽減といった大きなメリットがあるのです。

さて、ライブ・ステージに向けてエレアコを用意するのが良いのか、アコースティック・ギターにピックアップを取り付けるのが良いのか、迷われる方もいらっしゃるでしょう。

そこでまずエレアコが威力を発揮するシチュエーションを挙げてみましょう。一般的にエレアコはギター本体に音量や音色を調整するプリアンプが内蔵されています。手元で音量や音色が調整できるエレアコは、自己責任でサウンド・メイキングをしなければならなかったり、専任の音響スタッフが不在だったりする小規模のライブ・ハウス、ミュージック・バーなどで便利です。またハウリングに強いアイテムも多く、エレキ・ギターやドラムが入ったバンドの中でも安心して使える反面、生鳴りがさほど期待できないアイテムもあります。

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次にアコースティック・ギターにピックアップを取り付けるシチュエーションを挙げてみましょう。長年の憧れだったギター、アイドル・ミュージシャンと同じモデルといったお気に入りのギターを持ってステージに上がるとモチベーションが高まるものです。また弾き慣れた愛器でステージ・パフォーマンスをしたいという方もいらっしゃるでしょう。こういうとき後付けのピックアップは便利です。元からエレアコ仕様でないギターをエレアコ化できるわけです。

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但しライン出力される音が必ずしも生音と一緒ではありません。ライン音と生音の性質が異なるのはエレアコも一緒ではありますが、生音が気に入って購入したギターや、弾き慣れていて生音の印象が強いギターの場合、より一層ライン音と生音とのギャップが大きく感じられるかもしれません。それを許容することが必要となります。なお内蔵コンデンサー・マイクを併用するシステムであれば、比較的生音に近い音色を出力することは可能ですが、バンド演奏ではハウリングを誘発し易いという難点があります。

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エレアコを選ぶにしても、ピックアップを選ぶにしても、演奏する環境、条件に合わせたアイテム選びが鍵となるのです。

エレアコの代表的ブランド


【1】Ovation

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オベーションはエレアコを世に広めた最初のブランドと言えます。リラコードという樹脂を使ったボウル・バックが特徴。音の分離、バランスが良く、また生音のマイク乗りも良いため、スタジオ録音ではマイクで集音されることも珍しくありません。初期にはピックアップなしのモデルもラインナップされていました。アンダーサドル・タイプのピックアップを本格的に採用。その後のエレアコに与えた影響は計り知れません。

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開発に関わったグレン・キャンベルやジェリー・リードといったスタジオ、カントリー系の大御所に加え、ロギンス&メッシーナ、アメリカ、ニッティ・グリティ・ダート・バンドといった西海岸のバンドが早くから使用。後年ポール・マッカトニー&ウィングスのツアー映像が紹介された頃から一挙に人気が高まりました。フュージョン界でも愛用者が多く、その代表格アル・ディメオラのシグネチャー・モデルも後年発売されました。また、トップも樹脂としたアダマス・シリーズの最高峰スーパー・アダマスはマーティンD-45と並ぶステイタス・シンボルとなりました。特に日本ではニュー・ミュージックの南こうせつ、松山千春、中島みゆき、尾崎豊らが愛用し人気を博しました。

ほかにも、ポール・サイモン、ジョン・レノン、Charなど内外の歴史的なミュージシャンが使用してきており、今なお人気の高いブランドです。ドゥービー・ブラザーズの名盤『ミニット・バイ・ミニット』に収録されたカントリー調のインスト曲、「スティーマー・レーン・ブレイクダウン」でも、典型的なオベーション・サウンドが全面にフィーチャーされていました。このように録音作品でもその独特の音色を聴くことができました。
ここ数年、本国アメリカでの生産を休止し中国製の廉価モデルのみのラインナップとなっていましたが、間もなくアメリカ製も復活する予定とのこと。

⇒Ovationのギターを見る


【2】Takamine

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日本を代表するエレアコの人気ブランド。1970年代末に登場するや、オベーション一色だったエレアコの市場に風穴を開けました。タカミネもオベーション同様、独自開発のアンダーサドル・タイプのピックアップを使用しています。バンド・アンサンブルの中でも埋もれず、ハウリングにも強い利点が生かされ、当初はイーグルス、ジャクソン・ブラウン、ライ・クーダー、デイヴ・メイソンといった西海岸や西海岸系のサウンドを取り入れたミュージシャンに歓迎されました。60年代よりアコースティック・ギターを積極的にロックに取り入れてきた西海岸の音楽シーンでは、エレアコのニーズが高かったということでしょう。

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エレアコというとライブ用のアイテムというイメージがありますが、ジャクソンの「コール・イット・ア・ローン」や、パイオニアの「ロンサムカーボーイ」のCMソングにも使用されたライの「ゴー・ホーム・ガール」、またライが参加した喜納昌吉&チャンプルーズの「花~すべての人の心に花を」といった当時の録音作品においても、典型的なタカミネのエレアコ・サウンドを聴くことができます。そして、日本発のタカミネが、アメリカのカントリー、ヘビメタ、ハワイアンといったジャンルに瞬く間に広く浸透していきました。

日本人の愛用者としては長渕剛が筆頭に挙げられましょう。6連ペグ、ブラック・ボディのタカミネは伝説のアイテムとなっています。また最近大原櫻子のシグネチャー・モデルがリリースされてからは、「ギタ女」ご用達アイテムとしても注目されるようになりました。

内蔵プリアンプで幅広い音作りが出来るため、音響機材が整っていない演奏環境の中でも融通が利くのもポイントです。現行モデルではプリアンプがカートリッジ方式で交換が容易となり、アップ・グレードやオプションのピックアップを増設することも可能となりました。コンタクト・ピックアップを増設すれば、ボディ・ヒットの音もしっかり出すことができるため、フィンガー・スタイルのギタリストにも愛用者が増えてきています。

⇒Takamineのギターを見る


【3】Taylor

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リペアマン出身のボブ・テイラーが創始したテイラーは、NTネック、ESピックアップ・システムといった画期的な特徴を打ち出し、後発でありながら現在本国アメリカでは一番の人気を誇るブランドとなっています。エレアコ・モデルでも生音は良好で、抜けの良いサウンドはラインでも生でも扱い易く、正確な音程も相まってプロやハイ・アマチュアの評価が高いです。また出荷時より弦高が低めに設定されていて演奏性も抜群です。そのため入門者にも人気が高く、また弾き語りからテクニカルなインストまでどんな演奏スタイルにも追従することから、幅広い層の支持を受けています。

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アメリカのカントリー界では早くから愛用者が多く、熊本で毎年開催されているイベント「カントリー・ゴールド」で、ステージがテイラー大会だったのを目撃したことがあります。カントリーの世界から飛び出したスター、テイラー・スイフトもテイラー愛用者として知られており、シグネチャー・モデルも発売されています。また上述のロギンス&メッシーナやアメリカも現在は主にテイラーを使用。他社のエレアコからテイラーに持ち変えるミュージシャンも増えているのです。日本でも、福山雅治、小沼ようすけ、シグネチャー・モデルが発売されたこともあるコブクロの小渕健太郎など愛用者は枚挙に暇がありません。

最新のES2ピックアップ・システムでは、マイクで集音したような臨場感のあるサウンドが出力されるようになりました。ボディ・ヒットの音もよりしっかり拾ってくれるようになりました。

⇒Taylorのギターを見る


【4】Cole Clark

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21世紀に誕生したオーストラリアの新進ブランド。オーストラリア産の木材、スパニッシュ・ヒール、独自のセンサー・ピックアップといった特徴を持って、一躍人気ブランドの仲間入りを果たしました。コール・クラークの登場とほぼ同時期に巻き起こったサーフ・ミュージックのムーブメントの中で、その中心的アーティスト、ジャック・ジョンソンが使用。オーガニックなイメージを醸し出す外観と、木の質感を感じさせるナチュラルなサウンドがジャックの音楽に良くマッチし、コール・クラークを注目させました。ウクレレ(現在は中止)、スティール・ギターもラインナップされていたことも、サーフ・ミュージックを連想させました。間もなく、ジャンルや国境を超えてユーザーを増やし、日本でも森山直太朗などの一流ミュージシャンが使用するようになっています。

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現行の上位機種にはコンデンサー・マイクも装備され、より一層エア感のあるサウンドを出力するようになりました。よりナチュラルなサウンドを好むプレイヤーに評価されているブランドです。

⇒Cole Clarkのギターを見る


【5】YAMAHA

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楽器の総合ブランド、ヤマハのエレアコも人気があります。同社のアコースティック・ギター同様、コスト・パフォーマンスが良く演奏性に優れ、比較的安価なモデルもラインナップされているため入門者の愛用者が多いことも特徴。上位機種のプリアンプにはSRTと呼ばれるマイクで集音したような臨場感あるサウンドを得ることができるプロセッサー・システムを搭載。単板を採用したモデルも豊富で、生鳴りも楽しめる点も人気となっています。シチュエーションを選ばず使え、ベテラン、吉田拓郎から、ギタ女まで幅広い演奏者が愛用しています。

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⇒YAMAHAのギターを見る


いかがでしたでしょうか?
エレアコを用意するのが良いのか、アコースティック・ギターにピックアップを取り付けるのが良いのか、その選択の一助となれば幸いです。

(次回に続く...)

この記事を書いた人

白井 英一郎
1960年生まれ。吉田拓郎を聞いてフォーク・ギターを始める。その後イーグルス、オールマン・ブラザーズ・バンドなどのアメリカン・ロックに傾倒。エレキ・ギターも弾くようになる。ギター、スティール・ギター、バンジョー、マンドリン、ウクレレ、三線を弾くマルチ・プレイヤーとして演奏活動をする現役ミュージシャンであり、音楽誌や楽器専門誌のライターの肩書きも持つ。1970年代のファッションを好み、音楽のあるスローライフを実践するロハス・ピープル。入門者からベテランまで、お客様の音楽スタイルはもちろん、ライフスタイルに合った商品を提案する楽器のコンシェルジュ。

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