12弦ギター特集 その1

アコースティックギター エレキギター 多弦ギター
グレッグ・オールマンの訃報にショックを受けていたのですが、グレッグの親友でもあるジャクソン・ブラウンの来日のニュースで持ち直しました。さらにイーグルスがヴィンス・ギルを迎えての再結成だそうで、フォーク&ロック好きの昭和30年代男としては、一喜一憂、さらに驚きの毎日です。

さて、今回は12弦ギターを取り上げてみたいと思います。お客様から12弦ギターの音色、チューニング、弦の押さえ方などの質問をいただくことがあります。弦が12本もあって、どうやって押さえるのだろうと思われるのも当然です。そんな素朴な疑問にお答えしつつ、お勧めアイテム、代表的な演奏者、参考作品などまで紹介していきたいと思います。

音色


12弦ギターの特徴は、重厚できらびやかな音色にあると言えるでしょう。弦の本数が単に倍になっただけでなく、通常の弦の響きにプラスして、次の項で説明する通り一オクターブ上の響きが加わっているからです。空間的な広がりを感じさせるサウンドです。

チューニングと奏法


まず12弦ギターは、2本の弦をひとつの組として押さえていきます。この「組」をコースと呼びます。ティプレのように、ひとつのコースに3本の弦が存在する楽器もあります。12弦ギターの場合、12弦6コースの楽器と言うことになります。

一般的な12弦ギターのチューニングは6弦より、EEAADDGGBBEEとなります。6弦ギターと一緒のように思えますが、3コースから6コースまでは、通常の6弦ギターと同じ音程の弦(=主弦)とその一オクターブ上の音程の弦(=複弦)を組み合わせます。一般的な12弦ギターの場合、構えたときに複弦が上側に来ますが、リッケンバッカーの12弦ギターは下に来ます。3コースから6コースまでは、普通に押弦するだけでオクターブ奏法になるわけです。1コース、2コースはユニゾンとなります。

奏法は基本的に6弦ギターと一緒ですが、より12弦ギターを効果的に生かすために極力開放弦を絡めるのがミソです。解放弦の豊かな響きが12弦ギター・サウンドを際立てます。コード・ストロークも気持ち良いですが、分散和音ならさらに効果的でしょう。さらにコード・ワークにおいて、ナインス、サステンスなどの音を交互に交えたリフ的な展開をするとさらに印象的になります。

またリード・ワークに生かす場合は、3コース目を主軸に構えるのが肝です。1、2コースはユニゾンのため、12弦効果が薄いからです。バーズのロジャー・マッギンが参考になります。

12弦ギターとフォーク、そしてビートルズ


12弦ギターは古くよりアメリカのフォーク・ソングで使用されていました。古くはレッドベリー、そしてピート・シーガー、ボブ・ギブソンなどが知られます。レッドベリーらが使用した初期の12弦ギターはブランコ型のテールピースがついた物がほとんどです。おそらく弦の張力でブリッジが剥がれてしまうことを避けたかったのでしょう。そのせいもあってか、音色は素朴で、民族楽器的な雰囲気さえ感じさせます。1960年代のモダン・フォークの潮流の中、次第に一般的なアコースティック・ギター同様のブリッジの方式を持つ12弦ギターが旧式の物に置き換わっていきました。

アメリカのフォークに影響を受けた日本のフォーク・ミュージシャンも12弦ギターを使用しました。知らず知らずのうちに12弦ギターの音色を聴いてきた方は多いはずです。

12弦ギターの流れを変えた出来事にビートルズの登場があります。特にその初期においてジョージ・ハリスンがリッケンバッカーの12弦ギターを積極的に用いたことから、エレキ・ギターの12弦ギター・サウンドも広く認知されるようになりました。ビートルズに触発されたバーズがさらにエレキ12弦に特化した演奏をおこなうようになり、幻想的な音色がその時代のサーフ・ミュージック、サイケデリック・ロックなどのシーンにおいてもちょっとした流行となりました。今でも、60年代風なレトロな雰囲気を出すために、エレキ12弦を導入するアレンジが見られます。

1970年代のロック・シーンでも、レッド・ツェッペリン、イーグルスが、6弦ギターと12弦ギターの二つのネックを持つギブソンのダブル・ネックのSGを使用し、衝撃を与えましたが、彼らはフォークやロックにおける12弦ギターの使い方の一つの手本を示したと言えると思います。

代表的な12弦ギターのメーカー


① Martin


言わずと知れたアコースティック・ギターの代表ブランド。60年代、70年代のフォーク、ロック・シーンに登場するのはほとんどMartinです。しっかりとした作りで、バランスが良く、時代を超えて使われてきています。画像のD-28-12は名器D-28の12弦仕様です。イーグルスのグレン・フライが使用していたモデルです。

② Rickenbacker


エレキ12弦と言えばリッケンバッカーです。ジングル・ジャングル・サウンドは唯一無二です。画像は360/12C63。ビートルズのジョージ・ハリスンが最初に使用したリッケンバッカー12弦の復刻モデルです。

③ Gibson


ブランコ・テール・ピースのアコースティック12弦ギターを比較的後年まで作っていました。ロック・ファンにはダブル・ネックのEDS1275が印象的ですね。画像は限定モデルのハミングバードの12弦仕様。

④ Taylor


12弦ギターは弦の本数が多いのでネックに負担がかかります。そこで、反り、ゆがみなどには寛容にならざるを得ませんが、ネックの強さに定評があるテイラーは安心です。画像は856ce ES2。

⑤ YAMAHA


入門クラスの12弦ギターがラインナップされています。「1本目の12弦ギターはリーズナブルな物を」という方にお勧めです。画像はFG820-12。

このほかにもジョン・デンバー、キース・リチャーズで知られるギルド、イーグルスも愛用するタカミネの12弦ギターもポピュラーですね。

次回は参考作品をご紹介いたしましょう。

この記事を書いた人

白井 英一郎
1960年生まれ。勤続30年以上。吉田拓郎に憧れ12歳でギターを始める。スティール・ギター、バンジョー、マンドリン、ウクレレ、三線も演奏するマルチ弦楽器奏者。ウエスト・コースト・ロックとマーティン・ドレッドノート、フェンダー・テレキャスター、リッケンバッカー12弦ギター、ワイゼンボーンをこよなく愛する。ライターとしても活躍中で、伝説のムック「丸ごと一冊ヤマハFG」にも執筆。