【Vintage File】#1 Gibson 1959年製 Les Paul Junior Limed Mahogany ~ロックレジェンドの愛した偉大な「ジュニア」~

Gibson エレキギター ヴィンテージ 特集
「入門機種」「廉価版」...皆様はそのようなワードを聞いてどのような印象を抱かれるでしょうか?

GuitarQuest【Vintage File】、記念すべき第1回目の今回紹介させて頂くのは、その「入門機種」「廉価版」でありながら、その楽器としての完成度の高さから上位モデルに勝るとも劣らない地位を獲得した代表例である、こちらのモデルです。

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「Gibson Les Paul Junior」

元々レスポール(Les Paul Model)は、1952年にギタリスト、レス・ポール氏のシグネチャーモデルとして登場しましたが、その後1953年(販売は54年から)に"タキシードを着て演奏するのが似合う"最上位グレードの「Custom」、1954年に"入門者、学生でも手に入れやすい"廉価グレードの「Junior」が登場。さらに1955年に"Juniorをちょっとだけ豪華にした"中間グレードの「Special」が加わります。

この計4種類のLes Paulファミリーのうち、「Junior」は最もシンプルなスタイルです。ボディトップのアーチ加工なし、やや薄めのマホガニー・ボディに、P-90シ ングルコイルピックアップを1基のみ搭載。コントロールはボリュームとトーンのみ。「音は出るから後は自分でどうにかしろ!」と言わんばかりのロックで潔い仕様です。

 

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イシバシ楽器渋谷店の店頭にて展示中のこちらの個体は1959年製、所謂TVイエローカラーの1本。

Les Paul Juniorは登場した1954年当時はシングル・カッタウェイ・ボディ、サンバースト・フィニッシュでしたが、細かい仕様変更を経た後、1958年途中にダブル・カッタウェイ仕様にモデル・チェンジ。同時にカラーもそれまでのサンバーストは廃止となり、チェリー・レッドとライムド・マホガニー(通称TVイエロー)の2色展開となりました。特にTVイエローは当時の白黒テレビでも視覚的に目立つことを狙ったカラーと言われており、ヘッドストックに描かれたモデル名も「Les Paul TV MODEL」となっており、特別視されていた事が伺えます。

それではこちらの1959年製の個体の細部を見ていきましょう。

 

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べっ甲柄1プライのピックガードを取り外すと、ネックジョイント部分が現れます。一般的なLes Paul Standard系のディープジョイントと異なる形状で、ジョイント面がさらに広く取られている点が特徴です。ボディ形状は50年代当時としては先進的なダブル・カッタウェイで、最終フレットがカッタウェイ部分からはみ出したスタイルですが、このジョイント方式により、プレイアビリティ、楽器としての強度、音の伝達効率の良さを共存させていると言えます。

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こちらもピックガードとピックアップカバーを取り外した所です。通常ヴィンテージギターはピックガード下やカバーが被さっている下の部分はオリジナル・フィニッシュが色濃く残っている場合が多く、こちらの個体も僅かに濃いイエローが見て取れます。しかしながら差は僅かで、この個体の保存状態の良さが伺えます。

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ボディ背面のキャビティ内部。シンプル・イズ・ベストなサーキットがコンパクトに収まっています。
Les Paul Standard等と違いマホガニー1ピースボディのため、配線用の穴はドリルで上手く貫通させて開けています。

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オリジナル・アルミ・テイルピース(バー・ブリッジ)。第一印象としてはとにかく軽い!テイルピースとブリッジを兼ねたデザインで、エレキギターのブリッジとしては最も原始的な形状ながら、弦振動をダイレクトにボディに伝える特性からそのトーンにはファンも多く、後のPRS McCartyなどでリファインされている事からもその設計思想の高さが伺えます。

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何といってもこのボディエッジの曲面!現代ほど工作機械の発達していない時代ながら素晴らしい造形美。マホガニー1ピースの、ともすればのっぺりした印象になりがちなボディを美しく見せている見事なデザインです。

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前述の通り、Limed Mahoganyカラー限定となるヘッドストックの「Les Paul TV MODEL」ロゴです。

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恐らくストラップに挟んでいたシールドが当たって擦れていた跡でしょうか?レリックではなく、製造から半世紀以上に渡って楽器として使われた歴史によって付けられた、リアル・ヴィンテージならではのポイントです。

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Les Paulと言えば'59!と言えるほどある意味神聖視されている年式。こちらの個体のネックグリップですが、やはり’59年製らしい太すぎず、細すぎずの絶妙な形状です。Les Paulに限らず、実際の59年製のギブソンのナット幅、実はそれ程ワイドな個体は多くないのですが、適度に肉厚感がある影響で、「程よい」グリップと感じさせてくれます。

 

ご覧頂いた通り、「入門機種」でシンプルな仕様でありながら、細部まで考え抜かれて設計された楽器である事が伺えます。
P-90ピックアップによる適度にファットながらキレの良いトーン、弦の鳴りがボディに伝わる際のダイレクト感、シンプルながらプレイアビリティも両立させた美しいボディ・デザイン。鮮烈なTVイエローカラーによる見栄えの良さ。こういった魅力は多くのプレイヤーの心を捉え、キース・リチャーズ、ジョニー・サンダース、ビリー・ジョー・アームストロングなど、ロックレジェンド達にも愛用されてきました。
また、Gibson以外のブランドでこのモデルを手本にした例も多く、代表例としては若き日のポール・リード・スミスがこのダブル・カッタウェイ仕様のLes Paul Juniorや、Les Paul Special(こちらはシングル・カット)のコピー・モデルを制作し、そこから発展させていく形でサンタナ・シェイプや現在のPRSギターに行き着いた事が挙げられます。

「入門機種」「廉価版」でありながら、「本物」としての魅力を持ち、エレキギターの歴史上ある意味上位モデルよりも重要な存在と言えるかもしれない・・・。ロック・レジェンドも愛した偉大な1本と言えます。

 

【Vintage File】第1回目、如何でしたでしょうか?
今後もイシバシ楽器にて展示・販売中のヴィンテージから色々と紹介させて頂きますので、お楽しみに!


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この記事を書いた人

佐藤俊太
渋谷店リユースマネージャー。普段は渋谷店に籍を置きつつ、イシバシ社内のエレキやベース、アンプ等含めた海外でのヴィンテージ楽器の買付も担当、定期的に渡米し現地のディーラー/コレクターと直接交渉を重ね買付を行っている。特にアコースティックギターに精通しているが、プライベートではパンクやガレージロック、ダークなアンビエント等を好み、愛器は1970年製Guild Bluesbird、モディファイした近年製SG Special、自作のストラト・タイプ、Mayonesの7弦などなど。個人的にはヴィンテージ/近年製問わずアクの強い楽器が大好物。はじめての楽器選びから一生モノとなるとっておきの1本まで、皆様の愛器との時間が最高のものとなるべく、精一杯お手伝いさせて頂きます。

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