【Vintage File】#15 B.C.Rich 1974-75年製 Seagull II ~アメリカン・アバンギャルド~

エレキギター ヴィンテージ 中古楽器 特集
ヴィンテージ・近年製問わずアクの強い楽器大好きな渋谷店佐藤です。
【Vintage File】、前回のGuildに引き続き、今回も趣味全開で一風変わった1本を紹介させて頂きます。

 

B.C.Rich 1974-75年製 Seagull II!
この鮮烈なゲテモノっぽい(褒め言葉)ボディデザイン!ボディトップに付いた沢山のよくわからないスイッチ(笑)!好き嫌いが分かれるものですが、個人的にはたまりません!

B.C.Richはバーニー・リコ氏によりアメリカ・カリフォルニア州ロサンゼルスにて1960年代後半に設立されました。元々ウクレレやアコースティックギターの製造からスタートしたB.C.Richですが、1960年代末期にエレクトリック・ギターの製作にも着手。その後1972年に初の同ブランド・オリジナル・シェイプとして発表されたのが「Seagull(シーガル)」です。
初期のSeagullはシングル・カッタウェイ・シェイプのボディですが、その進化系として1974年頃に登場したのが今回取り上げるダブル・カッタウェイ・シェイプの「Seagull II」です。

それでは順番に細部を見ていきましょう。

 

他のどのブランドとも似ていない、ダブル・カッタウェイの独創的なボディシェイプは、登場してから40年以上経つ今尚色褪せない魅力を持っています。初期のB.C.Richのモデルネームには鳥の名前が与えられていますが("Seagull"=鴎、"Eagle"=鷲、"Mockingbird"=マネシツグミ)、そのネーミング通り、生物的な生き生きとしたフォルムですね。
ホーン部分の形状等に、その後のEagleやMockingbird等に続く意匠の原型が見て取れます。

 

ヘッド部分です。イニシャルである"R"をかたどったシンプルながら存在感のあるインレイ、ヘッドプレートのエキゾチックな杢目が目を惹きます。本器のペグは現行と同タイプのグローバー・インペリアルに交換されています。
1975年前後からヘッド裏やボディキャビティ内部にシリアルナンバーが打刻されるようになりますが、本器は初期のシリアルナンバー無しの個体となっています。

 

流麗で独創的なボディデザインと並ぶB.C.Richの特徴である、複雑なコントロール部です。配線やポット交換箇所はありますが、完動状態です!
マスターボリューム、マスタートーン、PUセレクターといったオーソドックスなものに加え、アクティブブースターのOn/Offスイッチ+ゲインノブ、ハイカットフィルターを段階的にかける事が可能なヴァリトーン・スイッチ、PUのコイルタップスイッチ、センターPU時のフェイズIn/Out切替スイッチを備え、シーンに合わせて多彩なサウンドメイクが可能となっています。
アクティブブースターはOnにするとかなり荒削りで暴れる印象ですが、好きな方にはたまらないサウンドです。

 

ブリッジは当時Les Paul(SG) Junior等のバーブリッジ仕様モデルのリプレイスメント・パーツとしてリリースされていたバダスが標準装備されています。



ピックアップはオリジナルでGuild製のものハムバッキングPUがマウントされています。同時期のStarfireやBluesbird等にも搭載されていたタイプですね。配線部等を見ると一見華奢そうな印象ですが、意外に出力はあり、ファットなトーンが特徴的です。
B.C.Richは1975年前後からDiMarzioが純正採用されるようになりますが、それ以前・1970年代前期~中期には本器のようにGuild製のものや、Gibson製のものが純正でマウントされた個体が散見されます。

 

B.C.Richのお家芸と言えるスルーネック!非常に滑らかなジョイントで、ハイフレットの運指もウルトラスムースです。ボディ各所のコンター加工もこの時期は手作業で行われており、見事な造形美です。

 

ホーン部分も鋭角的でありながら、どこか有機的で生物のフォルムを感じさせるような美しいデザインです。
マホガニーのボディは意外に薄く軽量で取り回しに優れており、抱えてみるとGibson SG等と近い印象ですね。



この後1970年代後期から80年代にかけてB.C.RichはEagleやMockingbirdといった本器の「進化系」にあたるモデルや、さらに鋭角的なWarlockやIronbird等特徴的なシェイプのモデルを次々に発表。80年代中期には日本製の比較的手頃な価格のモデルの生産もスタートし、バーニー・リコ本人が意図したところかどうか微妙な所ですが、ステージ上で目を惹く「変形ギター」として主にHR/HM系ギタリストから重用されるブランドとなります。
ハードロック界隈ではジョー・ペリー(Aerosmith)やスラッシュ(Guns N' Roses)らの愛用でも知られており、さらには故チャック・シュルディナー(Death)やロード・アーリマン(Dark Funeral)ら90年代以降のデス/エクストリームメタルバンドのギタリスト/ベーシストにもこぞって愛用されてきました。

その源流と言える、現代でも評価の高いUSAハンドメイド期の本器。2017年現在の視点から見てもその個性的なボディシェイプ、サウンドキャラクターは鮮烈で、目を惹く魅力的な逸品です。
ブランドとしてのB.C.Richは前回紹介させて頂いたGuild同様紆余曲折を経て現在に至っていますが、今尚数多くのファン/プレイヤーがいる事からその魅力は色褪せず、変わらず愛され続けている事が伺えます。

ヘヴィ系ギタリストのみならず、一寸変わったギター、個性的なギターでステージに立ちたいプレイヤーにとっては、その高いプレイアビリティ、多彩なサウンドを作り出せるコントロール部を活かし、意外にジャンルを選ばず現役バリバリで活躍できる1本ではないでしょうか?

次回の【Vintage File】も、王道の楽器が登場するのか、はたまた今回のように変わった楽器が登場するのか、お楽しみに!

 

この記事を書いた人

佐藤俊太
渋谷店リユースマネージャー。普段は渋谷店に籍を置きつつ、イシバシ社内のエレキやベース、アンプ等含めた海外でのヴィンテージ楽器の買付も担当、定期的に渡米し現地のディーラー/コレクターと直接交渉を重ね買付を行っている。特にアコースティックギターに精通しているが、プライベートではパンクやガレージロック、ダークなアンビエント等を好み、愛器は1970年製Guild Bluesbird、モディファイした近年製SG Special、自作のストラト・タイプ、Mayonesの7弦などなど。個人的にはヴィンテージ/近年製問わずアクの強い楽器が大好物。はじめての楽器選びから一生モノとなるとっておきの1本まで、皆様の愛器との時間が最高のものとなるべく、精一杯お手伝いさせて頂きます。