12弦ギター特集 その2

Taylor アコースティックギター エレアコ エレキギター 多弦ギター
12弦ギター特集第二回目です。

本題に入る前に、12弦ギターにまつわる思い出話しを紹介いたしましょう。
今から38年前の出来事です。あるアーティストの客様がいらっしゃいました。その方より12弦のエレアコを購入したいという相談を受けました。いくつかの要望があったのですが、その条件に見合うのは当時日本に上陸したばかりのテイラーの製品でした。私はテイラーの12弦ギターをご提案しました。当時、日本の代理店には12弦ギターの在庫がなかったのですが、その方はテイラーの仕様を気に入られ、現物を見ることなくご注文をいただきました。そして、入荷まで、3、4か月お待ちいただくことになりました。

お待ちいただいている間にニール・ヤングが来日しました。コンサートを観にいったのですが、ニールがテイラーの12弦ギターを使用したのです。翌日、アーティストさんのスタッフの方から電話がありました。アーティストさんもニールのコンサートにいらしていたそうですが、「俺が注文したギターをニール・ヤングが使っている!」とアーティスト氏が周囲の人達に自慢していたというのです。

その後、間もなくのことです。テイラーが届く前だったのですが、アーティストさんはレコーディングで12弦ギターが必要になったそうです。そこで、すぐに手に入る物でお勧めのものはないかという相談を受けました。レコーディングなのでエレアコである必要はないとのこと。私は店頭に陳列してあったビンテージのマーティンD-12-35をお勧めしました。このギターは私のお気に入りの1本だったので、自信がありました。そして、このマーティンも購入いただきました。間もなくテイラーの12弦ギターが到着し、無事納品となりました。

後年、悲しいことにこのアーティストさんは亡くなられました。先日、アーティストさんの機材を紹介する本が出版されました。ページをめくっていくと、あのとき購入いただいたテイラーの写真がありました。マーティンの12弦ギターの記述もありました。目頭が熱くなりました。

つくづく楽器の販売に携わっていて良かったと思う出来事でした。ちなみに私もアコースティックの12弦ギターはテイラーを愛用しています。



↑私が愛用する12弦ギター 左:Taylor K-55、 右:Rickenbacker 660/12TP JG

さて、それでは12弦ギターの参考作品をいくつかご紹介しましょう。



●KING OF THE 12-STRING GUITAR/LEADBELLY
元祖12弦ギター・ミュージシャンと呼べる戦前の黒人フォーク・シンガー、レッドベリーのベスト盤。フォークと言っても曲調はほぼブルースです。レッドベリーはステラの12弦ギターを使用していますが、当時の12弦ギターの音色は民族楽器的な雰囲気があります。



●STOP ALONG THE WAY/BOB GIBSON
バーズのロジャー・マッギンに影響を与えたフォーク・シンガー。フォーク・リバイバル期のシンガーだけあって、レッドベリーよりモダンなスタイルです。この盤は後年リリースされたライブ盤。弾き語りでも厚みのある伴奏は12弦ギターならでは。



●A HARD DAYS NIGHT/BEATLES
1964年発表のビートルズの三作目。同名の映画のサントラ盤でもあります。ジョージ・ハリスンが奏でるリッケンバッカーの12弦ギター・サウンドが、エレキ12弦の魅力を世界に知らしめました。



●MR.TAMBOURINE MAN/BYRDS
フォーク・ロック・サウンドを確立させたバーズのデビュー・アルバム。1965年発表。ジョージ・ハリスンに刺激を受けたロジャー・マッギンはエレキ12弦の奏法をさらに進化させ、ジングル・ジャングル・サウンドの異名をとりました。特にタイトル曲のイントロはインパクト大。



●MADE IN U.S.A./BEACH BOYS
サーフィン・サウンドの代表格、ビーチ・ボーイズが1986年に発表した、当時の新曲入りのベスト盤。’California Girl’などでエレキ12弦ギターのサウンドを聴くことができる。また新録音されたママス&パパスのカバー、’California Dreamin’’ではロジャー・マッギンが12弦ギターでソロをとっている。



●THE LEO KOTTKE/LEO KOTTKE
ロジャー・マッギン同様、12弦ギターに特化したギタリスト、シンガーのレオ・コッケ。そんな彼のCD2枚組のベスト盤です。アコースティックがメインで幅広いジャンルを網羅。テイラーからシグネチャー・モデルも発売されています。



●LED ZEPPELIN/LED ZEPPELIN
レッド・ツェッペリンの四作目。日本タイトルは『レッド・ツェッペリンIV』。1971年発表。ジミー・ペイジが弾く’Stairway To Heaven’(「天国への階段」)の12弦ギターは語り草です。



●HOTEL CALIFORNIA/EAGLES
イーグルスの五作目。ドン・フェルダーが弾くタイトル曲のイントロは、レッド・ツェッペリンの’Stairway To Heaven’と並ぶ70年代ロックの代表的な12弦ギターと言えるでしょう。ドンもジミー・ペイジもステージではギブソンのダブル・ネックSG(12弦+6弦)を使用という共通点もあります。



●THE GABBY PAHINUI BAND VOL.1/ THE GABBY PAHINUI BAND
ライ・クーダーによって広く紹介されたハワイアン・ミュージシャン、ギャビー・パヒヌイのバンド名義の作品。1975年発表。ハワイアン・スラッキー・ギターをこの作品で始めた本格的に聴いたロック、ポップス・ファンは多かったのです。ギャビーは12弦ギターを使用しています。



●元気です/吉田拓郎
日本のフォーク・ブームを巻き起こした吉田拓郎の人気アルバム。1972年発表。「夏休み」、「たどり着いたらいつも雨降り」、「こっちを向いてくれ」などで、アコースティック12弦ギターが効果的に使われています。知らず知らずのうちに12弦ギターの音色を刷り込まれているフォーク・ファンも多いことでしょう。

いかがでしたでしょうか。12弦ギターの魅力に触れていただければ幸いです。

この記事を書いた人

白井 英一郎
1960年生まれ。勤続30年以上。吉田拓郎に憧れ12歳でギターを始める。スティール・ギター、バンジョー、マンドリン、ウクレレ、三線も演奏するマルチ弦楽器奏者。ウエスト・コースト・ロックとマーティン・ドレッドノート、フェンダー・テレキャスター、リッケンバッカー12弦ギター、ワイゼンボーンをこよなく愛する。ライターとしても活躍中で、伝説のムック「丸ごと一冊ヤマハFG」にも執筆。