【取材レポート】D’Addario(ダダリオ)プロダクトマネージャーRob Cunningham氏インタビュー《後編》

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9月某日都内某所にて実現したダダリオ社のプロダクトマネージャーRob Cunningham氏へのイシバシ楽器独占インタビュー。ミュージシャンによるミュージシャンのための製品を多くリリースしているダダリオ社のこだわりやエピソードなど語っていただきました。前回に続き、今回は後編ということでその模様をお送りいたします!

 

後編:『こだわりのカポタストと楽器ケア用ツールの話』


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イシバシ楽器:では、次にPlanet Wavesで代表的な製品であるカポタストについてお話を聞いていこうと思います。

Rob氏:カポについても他の製品と同様に、市場のあらゆるカポタストを集めて研究することから始まりました。
例えば、一般的なクリップタイプのカポタストはとても強いスプリングを使用しているため装着すると弦を強く引っ張ることになり、その結果、少し音がシャープしてしまいます。
(実際にアコースティックギターを持ちながら)開放弦でチューニングが合っていても、弦に対し強いプレッシャーで押さえることでピッチがずれるんです。

このタイプのカポタストではおおよそ14~15LBS(約6.5kg)のテンションがかかるのですが、これは必要以上の力なのではないかということに至ったのです。また、バネの構造上、弦に対してどうしても均一に力を掛けることが出来ないので、シャープしてピッチがずれてしまうんです。

ギターテックが常にいるようなミュージシャンはカポを装着した状態でチューニングをしてギターを手渡してくれるので問題はないのですが、そうでないプレイヤーはピッチのずれた楽器でバンド演奏しなければならない。毎回カポをつけたり外したりする度にチューニングしなければならないのはとても大変なことですので、それを避けてあげたいと思いました。

ネッド・スタインバーガー氏と開発したカポタストでは、圧を調整出来るようになっており、しかも均一に力を掛けることが出来るようになっています。それによってピッチを狂わせず、クリアな弦の響きを実現しています。一度そのテンションを決めてしまえば、どのポジションでも最適なピッチを得ることが出来るのです。

Planet Waves / NS Tri-Action Capo pw_prod_pw-cp-09_main_1pw_prod_pw-cp-09s_main_1

イシバシ楽器:そうするとプレイヤー毎に異なる押弦のクセを設定できるということになりますね?

Rob氏:その通り、しかも一度調整してしまえばどの弦に対しても常に均一な圧力を掛けることが出来るということがポイントです。(実際にカポをセットしながら)簡単なセッティング方法としては、任意のフレットポジションにカポと取り付け、カポのつまみを回してちょうど良いところで止めておくだけです。

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イシバシ楽器:とても簡単に出来ますね。

Rob氏:ポイント(特徴)としては必要以上の圧力を掛けず、なおかつ各弦に対し均一な力で押さえることが出来るということです。

イシバシ楽器:弦の太さの違いに合わせて設定する必要もあるということですね?

Rob氏:そうですね。弦の太さやフレットの高さ、弦高の違いなど細かな違いによって最適な圧力は異なりますので、使用するギターに応じて調整することでベストなトーンを得ることが出来ます。
既存のスプリングタイプのカポタストの場合、その圧力はバネの力に依存しているので、ギター毎の細かな違いに対応できないのです。

 

イシバシ楽器:ネッド・スタインバーガー氏がプラネットウェーブス社のカポタストに関わったのはどういった経緯だったのでしょうか?

Rob氏:ネッド・スタインバーガー氏はご存じの通りヘッドレスギターの開発で大きな成功を収めていましたが、実はネッド・スタインバーガー氏はギターをデザインしましたがギターを弾かないんですがとても賢い方なんです。

ネッド・スタインバーガー氏は自身のヘッドレスギター用にダブルボールエンドのギター弦が必要になりました。
自らギター弦を作るのは難しかったので、ネッド・スタインバーガー氏がジム・ダダリオにヘッドレス用ダブルボールエンド弦を作ってもらえないかとオファーしたところから関係がスタートしました。

最初からカポを作ろうという話から始まったわけではなかったのですが、徐々に打ち解けていき、ネッド氏もジム・ダダリオともにとても賢い方なのでギターや弦の話をしていて、弦を押さえるツールである「カポタスト」に行き着き、こうしたもっと良くなるとかそういう話をしている中でケミストリー(化学反応)のようなものが起こり、共同開発に至ったのです。

イシバシ楽器:それはあまり知られていないストーリーですね。

Rob氏:そうかもしれないですね。

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イシバシ楽器:大変興味深いお話でした。では、次はNSカポについてお伺いします。

Rob氏:主流となっているカポタストには大きく分けて2種類ありますね。先にお話ししたトリガー(スプリングの力で挟み込む)タイプとスクリューなどで固定するタイプです。

トリガータイプは付け外しがとても簡単であることが特徴で、このスクリュータイプはコンパクトでトリガータイプより圧は若干弱めですが、テンションを調整することが出来ません。先ほどと同様に適正な圧で押さえることが出来ず、ピッチがずれてしまうことがありますが、NSカポの場合は、このスクリューで最適な力で押さえることが出来るのです。

私も実際にリハーサルやレコーディングでこのタイプのカポタストを、ライブのときは取り外しがスムースに行なえるトリガータイプのカポタストを使うなどして、場面に応じて使い分けています。

Planet Waves / NS Capopw_prod_PW-CP-02_main_1 pw_prod_PW-CP-02C_main_1_silver

イシバシ楽器:このNSカポも各弦に対し均一に力が掛かるようになっているのでしょうか?

Rob氏:そうです。(実際にカポを手にしながら)スクリュー自体は斜めに取り付いていますが、まっすぐ力が加わるような構造になっているので、挟み込むことで弦を引っ張ってしまうことはありません。
一般的なトリガータイプの場合はこの力のポイントがずれているので、上下どちらかに引っ張るような力の加わえ方をしてしまうんです。

イシバシ楽器:このスクリュータイプのカポも多くの製品を研究したのですか?

Rob氏:製品によっては重すぎたり、軽すぎたりするんです。重すぎると演奏していてネックが落ちたりして弾きづらくなったりします。NSカポには飛行機にも使用されるアルミニウムを使用しているんです。

イシバシ楽器:素材の選定にも相当なこだわりを持っていたんですね?
Rob氏:そうですね。やはり重いカポタストは、バランスが悪くなるのでしっくりこないんです。そういう気になる点をプレイヤーから排除してあげたかったんです。
いくらでも軽くすることは可能なんですが、強度や機能も含めて、最も演奏に違和感のない形としてこれがベストであると考えました。

ホント、クレイジーですよね(笑)

イシバシ楽器:いやいや、とても深くて興味深い話ですよ!もちろん、クレイジーだとは思いますけどね(笑)

Rob氏:基本的に私たちはギターアクセサリーギークですからね!(笑)

イシバシ楽器:そういう方からお話が聞けてとても楽しませてもらっています!
それではちょっと違う製品のお話をお聞かせください。「Guitar Rest」や「Pro-Winder」のような独自の製品をリリースされていますが、そういう面白いアイデアは常に考えているのですか?

Rob氏:そうですね、例えばこのPro-WinderはPlanet Wavesがギターアクセサリーを始めて、比較的早い段階で開発したアイテムだったと思います。

 

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Planet Waves / Pro-Winder (DP002) for Guitar

 

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Planet Waves / Pro-Winder (DP002B) for Bass

Rob氏:ジム・ダダリオはギタープレイヤーなので、よく弦交換をするのですが、いつもペグワインダーと弦をカットするニッパーを持ち歩いていました。あるとき、「なぜ2つも持ち歩いているんだろう。これらを1つにすることは出来ないか・・・。」と考えるようになったんです。それがきっかけで製品化に至りました。

私もこれがないと困ってしまうくらい重宝しているアイテムです。自宅の各部屋に置いてありますよ(笑)今では「なんでバラバラだったんだろう」と思うほどです。当時は「誰がペグワインダーに10ドル以上も費やすんだ?」って言われていましたが、今ではスタンダードなアイテムになったんです。

イシバシ楽器:利便性を求めることで新しい製品が生まれるという事例の一つですね。

Rob氏:そうですね、弦交換って誰もが面倒だと思っていると思うので、少しでも楽になればという想いが形になったというわけです。

でも私の場合少し変わっていて、弦を交換するのがとても好きなんです!弦交換するってしっかりと自分がギターと向き合う濃密な時間だと思うんです。確かめ合うというか繋がるというか・・・。

イシバシ楽器:それはすごく分かります!楽器をメンテナンスするということは楽器とのコミュニケーションをとるためのすごく貴重な時間ですよね。練習したりメンテナンスしたり、楽器と向き合う時間を多くとることは上達するためには欠かせないと思うんです。

Rob氏:その通りだと思います!

 

イシバシ楽器:というわけで、クリーナーなどのケアグッズに関してもお話し聞かせていただけますか?

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PW-XLR8-01(String Lubricant and Cleaner)pw_prod_pw-xlr8-01_main_1

PW-GH-HTS(Acoustic Guitar Humidifier wih HTS)PW-GH-HTS_main

 
Rob氏:分かりました。少し話が外れてしまうかもしれませんが、こんなエピソードがあります。私のバンドのギタリストは自分のギターのメンテナンスやクリーニングを一切行っていませんでした。ネックもかなり反っていて弦高はかなり高くなっていて、誰もがそのギターを手にして「こんな状態でどうやって弾くんだ !?」って言っていました。それで私がそのギターを持ち帰り、次のリハーサルまでに調整してあげたんです。

そのメンテナンスしたギターを手渡してあげると、「なんてこった、すごく弾きやすくて最高じゃないか!」って喜んでくれたのが強く記憶に残っています。

イシバシ楽器:やはり楽器にはちゃんと向き合ってあげないといけませんね。

Rob氏:私はギターに対する好みとして2つのアティチュードを持っていて、一つは「傷一つないクリーンな状態を保ちたい」ということと、もう一つは「とにかく弾き込まれて肌の一部のようになる」ことです。ギター人格とでも言いましょうか。

イシバシ楽器:ギターに名前とか付けていたりするのでしょうか?

Rob氏:さすがに名前までは付けていないです(笑)でも、たまに妻から「ギターの方が大事にしているんじゃない!?」って言われますけどね!

イシバシ楽器:それはアメリカも日本も同じなんですね!(笑)

Rob氏:そうですね(笑)

 

イシバシ楽器:それでは、もし他に日本のユーザーにおすすめしておきたい製品があれば教えてください。

Rob氏:一つ挙げるとすればNSマイクロチューナーですね。

Planet Waves/NS Micro Headstock Tuner(PW-CT-12)

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Rob氏:多くのクリップチューナーはヘッドに付けるにはとても大きくて、美しい素晴らしい楽器を台無しにしているように思えたんです。ですので、ヘッドストックの裏側に取り付けられる小さいタイプにすれば、オーディエンスからはこの少しのクリップ部が見えるだけで済むんです。

多くのクリップチューナーを取り付けたままで飛んだり跳ねたり、楽器を振っても演奏すると容易に振り落とされてしまいますが、これは簡単には振り落とされません。チューニングが出来ていないギターほど残念なものはありませんからね。

イシバシ楽器:そうですね。オーディエンスに不快な思いはさせたくないですもんね!

Rob氏:そうですね!

 

イシバシ楽器:既にチューナーやメトロノームのアプリはリリースされていると思いますが、これらもダダリオ社内で開発されたのですか?

Rob氏:そうです。既存のアプリを書き換えたわけではなくて、一から自分たちで開発しました。コードライブラリーやスケールライブラリーも同様です。

 

イシバシ楽器:アプリも自分たちで作ってしまうんですね。

Rob氏:しかもその中にはフリーダウンロードのアプリもあります。(D'Tools)

screen322x572_1 screen322x572_2 screen322x572_3 screen322x572_4 screen322x572_5(※D'Toolsのスクリーンショット)

 

イシバシ楽器:いろいろとお話を伺ってきましたが、そろそろお時間となってしまいました。最後に日本のユーザーにメッセージがあれば是非!

Rob氏:Planet Waves製品を使って楽器を弾く楽しさを見つけていただければと思います。Make a Play Fun !

 

イシバシ楽器:本日は貴重なお話をありがとうございました。また日本にいらした際にはお話し聞かせてください!

Rob氏:はい、またお会いしましょう!

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インタビュアー:㈱石橋楽器店 WEBSHOP プロダクトマネージャー 小川友也

撮影:㈱石橋楽器店 WEBSHOP 落合亮介

取材協力:株式会社キョーリツコーポレーション

 

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