【Vintage File】#2 Gibson 1951年製 SJ-200 Sunburst ~スターのためのスーパー・ジャンボ~

アコースティック・フラットトップギターのトップモデルとして、Martin D-45と双璧をなす存在と言えるGibson SJ-200。その迫力のルックスとサウンドにより、ジョージ・ハリスン、ボブ・ディラン、長渕剛などなど、カリスマミュージシャンに多く愛されてきました。【Vintage File】第2回は、ギブソンが誇るこのフラッグシップ・モデルについて取り上げたいと思います。

⇒【Vintage File】第1回『Gibson 1959年製 Les Paul Junior Limed Mahogany ~ロックレジェンドの愛した偉大な「ジュニア」~』はこちらから

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元は第二次大戦前の1937年、当時の映画スター兼シンガーのレイ・ウィットレイのオーダーによる特注品として登場したスーパージャンボ。翌年よりギブソン・フラットトップ・アコースティックのフラッグシップモデルとして華々しくデビューします(Super Jumbo 200のモデルネームが与えられたのは翌々年の1939年から)。

戦前のオリジナル・SJ-200はプリウォーD-45と双璧をなすコレクターズ・アイテムと言え、この時期のギブソンらしく仕様は安定していませんが、最初期型は16.875インチワイドのボディ、26インチの超・ロングスケールネック、エボニー指板、ハカランダサイド&バック、ダブルXブレーシング、同時期のJ-55等と同様の各弦独立型サドルといった仕様であったというのが定説です。

その後第二次大戦により生産が中断されましたが、戦後の1947年より、17インチワイドのメイプルサイド&バック仕様に変化しつつ復活。現在ではこちらの復活後の姿の方がポピュラーと言えます。
復活直後は「SJ-200」のネーミングでしたが、1950年代中期に入り「J-200」のネーミングとなり、ピックガードの素材&デザイン変更の他、ボディサイズ、厚みの若干の変更などが行われました。この仕様変更はある時を境に一気に行われたわけではなく徐々に行われていったため、50年代中頃までは複数の仕様のSJ-200(J-200)が入り混じる結果となっています。

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渋谷店アコースティックフロアにて展示・販売中の本器、シリアルナンバーは1951年ですが、ボディ内部のファクトリー・オーダー・ナンバーは1950年のもの。1950年内にボディが組まれ、最終的に塗装や調整が完了し出荷されたのが1951年であったものと思われます。

仕様としてはホワイトラベルに「SJ-200」ネームの印字、縁取りあり、花柄の小さい40年代仕様デザイン(所謂前期型)のピックガード、2トーンサンバーストカラー、約4.75インチのボディ厚と、所謂40年代スペックとなっています。

*1950年代終わり頃まで、ギブソンはシリアル・ナンバーとは別に、「ファクトリー・オーダー・ナンバー」という管理用番号をボディに記載していました。シリアル・ナンバーはラベルに印字されているパターンが多く、こちらのSJ-200の他、L-4、L-5などのアーチトップ・モデルのような高級モデルはボディ内部にラベルが貼られているのですが、所謂中~低価格帯のモデル(J-45やLG-2といったフラットトップや、L-48などの手頃なアーチトップ・モデル)にはラベル自体が貼られておらず、したがってそういったモデルはシリアル・ナンバーなし、ファクトリー・オーダー・ナンバーのみという仕様となっています。

それでは細部を見ていきましょう。

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現代ほど工作機械も発達していなかった当時、特徴的なムスタッシュ・ブリッジも職人により手作業で製作されており、よく見ると左右で僅かに形状が異なっています。しかしながら、違和感があるというよりは、機械加工のものとはまた異なる、手工品特有の生々しさを感じさせてくれる印象です。

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何といってもこのワイルドなピッキング跡。こちらの個体は全体的にオリジナル性は高いのですが、しっかりと楽器として弾き込まれてきた事が伺える、歴史を感じさせるポイントです。

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ボディバック表裏。所謂ギラついたトラ目ではなく、うっすらとバーズ・アイが出た味わい深い木目です。この時期特有の重厚な2トーンサンバーストも相まって迫力あるルックスです。

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ブレーシングは丁度この時期より僅かに後から、トーンバー2本がボディ水平方向(ラダーブレーシングのように)に配されているパターンの個体も出現し始めますが、本器はアングルのついた一般的なパターンのものです。

駆け足で見ていきましたが、如何でしたでしょうか?
フラッグシップ・モデルらしい華やかなルックスが、半世紀以上経過し凄みを増した、何とも趣深い逸品。また、ぱっと見のサイズ感からは意外ですが、座ってボディを構えた際の収まり感はバランス良く、小柄な方でも決して扱いづらいギターではない点もポイントです(実際、プロ/アマ問わず、SJ-200愛用者には小柄なプレイヤーや女性のプレイヤーも多いです)。

個人的な主観にはなってしまいますが、SJ-200、特に1950年代までのヴィンテージは独特の懐の深さを持ったギターのように感じます。出音のバランスは意外な程良く、繊細なフィンガースタイルなどでも良さが出せるタイプです。もちろん力強くピッキングすればその特大ボディを活かし枯れきったサウンドでしっかりと鳴ってくれます。

スター・プレイヤーのための圧倒的なカリスマ性と、不思議な懐の深さ・包容力を併せ持った、何とも味わい深いギターと言えます。

次回のVintage Fileも、どんな個性の楽器が出てくるか、お楽しみに!

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