ライブ派のエレアコ&ピックアップ選び その2

アコースティックギター エレアコ 特集
前回の続きです。前回はエレアコの人気ブランドをご紹介いたしました。今回はピックアップの種類や人気ブランドと商品をご案内いたしましょう。エレアコを選ぶ場合にも、少なからず参考となるお話しになると思います。長文ではありますが、よろしくお付き合いくださいませ。

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(ステージで演奏中の筆者。ギターはMartin D-41、ピックアップはL.R.Baggs M-1 Active。後ろに並ぶワイゼンボーン・レプリカAsher Acoustic Hawaiian ImpearialにはSkysonic T-903がマウントされています。)

<ピックアップ>


●ピックアップの種類


後付けのピックアップ選びはもちろん、エレアコを選ぶ際にも役立つミニ知識です。

①アンダー・サドル・タイプ
後述するL.R.Baggs Element Active VTC。人気のアンダー・サドル・タイプ・ピックアップです。

後述するL.R.Baggs Element Active VTC。人気のアンダー・サドル・タイプ・ピックアップです。

サドルの下に、ピエゾなどの振動を電気信号に変える素子を敷くタイプです。オベーション、タカミネを初め過半数のエレアコ製品に使用され普及率は高いです。音に芯があり、バンド・アンサンブルの中でも埋もれにくく、ハウリングにも強い長所があります。特有のアタック感がありますが、それも近年ではエレアコ用プロセッサーで軽減も可能となりました。エレキ・ギターやドラムが入ったバンド・アンサンブルで使用するなら、このタイプがお勧めです。

②マグネティック・タイプ
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(現代的なマグネティック・ピックアップの走りSunrise)

エレキ・ギターのピックアップと同様の構造を持っています。弦の振動を拾うためピッキングの強弱のニュアンスが付けやすく、癖も少ないですが、音色はエレキ・ギターに近くなります。マグネティック・タイプでありながらボディ振動も拾うよう工夫が凝らされたタイプや、コンデンサー・マイクと一体化した物が人気です。ギター本体へ取り付けが比較的容易なのもこのタイプの特徴です。

③コンタクト・タイプ
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(Fishmanのコンタクト・タイプ。小型の民族楽器などにも応用できます。)

ピエゾなどの素子を共鳴板に直接貼り付ける方式のピックアップです。安価で簡易的な製品もありますが、アンダー・サドル・タイプやマグネティック・タイプと併用する目的の物もあります。高品位なコンタクト・ピックアップはマイクで拾ったようなエア感を足してくれます。ボディ・ヒットをするプレイヤーに必須。

④コンデンサー・マイク
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(画期的なギター内蔵マイクと言えるL.R.Baggs Lyric。)

アンダー・サドル・タイプやマグネティック・タイプと併用するギターに内蔵する小型のコンデンサー・マイク。マイクならではのエア感のある音色が得られますが、フィードバックを起こしやすいのが難点。ただし、フィードバックはノッチ・フィルターまたはアンチ・フィード・バック機能のあるプロセッサーや外付けプリアンプを併用することで多少なりとも軽減はできます。弾き語りなど少人数での演奏向け。

バンド演奏に最適なのはアンダー・サドル・タイプです。アンダー・サドル・タイプの音はアタックが強く苦手と言う方もいらっしゃいますが、言い換えればエレキやドラムが入ったバンドの中でエレアコのサウンドを埋もれさせないための特性でもあるのです。このタイプはハウリングに強い点も見逃せません。ちなみに、バンドの編成や演奏する環境によっては、アンダー・サドル・タイプのピックアップであってもハウリングが免れない場合もあります。CSN、イーグルス、ドゥービー・ブラザーズ等のウエスト・コーストのロック・バンドは、アコースティックとエレクトリック・サウンドを融合させた代表的な例として挙げられますが、彼らのコンサートを見た経験のある方であれば、レコードやCDではアコースティック・ギターがフィーチャーされていた楽曲なのにライブではエレキ・ギターを使って演奏されることがあることに気づかれたでしょう。レコーディングでは可能であっても、ライブでは不可能というアンサンブルがあるということも知っておきましょう。

後付けの場合で、ギターへの加工をしたくない、もしくは最小限に止めたいのであれば、マグネティック・タイプがお勧めです。生鳴りに近い音色を求めるのであれば、コンタクト・タイプやコンデンサー・マイクを併用すると良いでしょう。コンタクト・タイプやコンデンサー・マイク内蔵のエレアコをライブ・ハウスなどで使用する場合、オペレーターさんにその旨申し出ておきましょう。スムーズにサウンド・チェックができる場合があります。

●パッシブかアクティブか


一般的にアコースティック・ギター用のピックアップの信号は出力が小さく、そのままPAやアンプに接続するとノイズが目立ちやすくなります。不特定多数のお客様から入場料をいただいて演奏を聴かせるライブ・ハウスにおいては、そのようなクオリティは歓迎されません。プリアンプを通してピックアップから出力されるハイ・インピーダンスの信号をロー・インピーダンスに変えておく必要があります。エレアコの場合はほとんどの場合、プリアンプが内蔵されています。後付けのピックアップの場合、プリアンプが内蔵されていないパッシブ・タイプのピックアップと内蔵されたアクティブ・タイプの選択肢があります。アマチュアの立場であっても、ライブ・ハウスで演奏するならアクティブを使うべきでしょう。しかしながら、結婚式の余興や、アマチュア向けのオープン・マイクのイベントで演奏するのであれば、パッシブで十分かもしれません。パッシブ・タイプでも外付けのプリアンプ、エレアコ用プロセッサー、DIを併用することでロー・インピーダンス信号に変換することは可能ですが、ギターとそういった機器を接続するケーブルがノイズを拾ってしまう可能性があり、アクティブ・タイプのピックアップがベストです。

●後付けピックアップを選ぶポイント


アマチュアが機材を選ぶ際の一番の指標は憧れのミュージシャンでしょう。しかしながら、アコースティック・ギター用のピックアップに関しては、必ずしも憧れのミュージシャンと同じ物を入手することがベストであるとは限りません。有名なミュージシャンがコンサート・ステージで奏でるサウンドは、多くのスタッフの協力があって、また本格的な音響システムがあって成立している場合が多いのです。憧れのミュージシャンと同じギターと同じ高価で高性能のピックアップを入手したとしても、自分自身でサウンド・メイキングをしなければいけないような環境の中では威力が発揮できない場合もあります。またサウンド・チェックに時間をかけたのに音がまとまらず、納得がいかないまま本番を迎えることになった、などと言う話も珍しくありません。ピックアップは、演奏する環境、条件にマッチしたものを選んでおくようにしましょう。
それでは、外付けピックアップのお勧めブランドとアイテムを挙げましょう。

①Fishman
古くからMartinのピックアップのOEM生産も手がける老舗ブランドです。現在ではさまざまなブランドの製品に採用されていることからも信頼性の高さが分かりましょう。モデリング技術を取り入れたプリアンプ、プロセッサーにも積極的に取り組んでいます。たいていのライブ・ハウスのオペレーターさんたちが扱い慣れており、サウンド・チェックでストレスを感じさせないでしょう。これはライブの際には重要なことです。

お勧めアイテムはAGシリーズです。古くからラインナップされているシンプルなアンダー・サドル・タイプのピックアップですが、楽器の元の音色を生かしたニュートラルな特性を持つのが特徴です。エンドピン・ジャックにプリアンプが内蔵されたパワー・ジャックと組みあせて使うのがベストです。なお手元で音量や音色をコントロールしたい方には、アンダー・サドル・タイプとしてはMatrixリリーズがお勧めです。またNeo-Dシリーズは簡易的なピックアップの中では一番のお勧め。パッシブ・タイプのマグネティック・ピックアップですが、プリアンプを併用すればプロ・クオリティです。エド・ガーハードも使用しています。

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(シンプルで使いやすい長年の定番AGシリーズ。)

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(安価でギターへの取り付け加工不要のNeo D。)

②L.R.Baggs
近年のGibson製品にも同社のピックアップが搭載されており、またプリアンプ/DI系商品の人気も高く、良く知られるブランドとなっています。L.R.Baggsのアンダー・サドル・タイプやマグネティック・タイプのピックアップも、ライブ・ハウスのオペレーターさんたちが扱い慣れていて、サウンド・チェックもスムーズでしょう。

まず、お勧めアイテムのひとつ目として挙げたい物はElement Active VTC(上方の画像参照)です。ギブソンのJ-45 Standard、Hummingbird Standard等にも採用されているプリアンプ内蔵のアンダー・サドル・タイプのピックアップです。サウンドホール内に装着するボリュームとトーンのコントロールも付いています。現在アンダー・サドル・タイプのピックアップとしては最も人気のアイテムと言えます。
またトゥルー・マイクと呼ばれる新マイクとアンダー・サドル・タイプのピックアップを組み合わせたAnthemのシリーズは、よりナチュラルなサウンドを求める方にお勧めです。特にアンダー・サドルとマイクのバランスが調整できるAnthemは、さまざまなシチュエーションで威力を発揮できるでしょう。

マグネティック・タイプのお勧めアイテムはM1Activeです。ボディの振動も拾う工夫が凝らされていて、ナチュナルな音色が楽しめます。よりボディ振動を多く拾うM80というバリエーションもあります。
特殊マイクとプリアンプを組み合わせたLyricも注目を浴びています。ギターに内蔵するマイクロフォンとお考えいただければ良いでしょう。まさしくマイクで集音した音色です。ソロ演奏や弾き語り向けです。

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(アンダー・サドル・タイプとトゥルー・マイクをミックスしたAnthem。)

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(ボディ振動も拾う画期的なマグネティック・ピックアップM-1Active。)

※高品位なピックアップの中にはデリケートな製品もあります。音は素晴らしくても、サウンド・チェックに手間取ったり、現場で緊急な調整が必要になったりするようでは困り者です。専任のオペレーターやテクニシャンが同行できる環境でない限り、どんなシチュエーションでもストレスなく使えるアイテムが心強いです。上述のFishmanとL.R.Baggs製品であれば安心です。

③Skysonic
弊社ではまだ一部の店舗のみのお取り扱いとなっていますが、注目株となっているのがSkysonicというブランドです。全商品アクティブ・タイプでコスト・パフォーマンスが高く、マグネティック・ピックアップとコンデンサー・マイクが一体化しています。出力が大きく、アンダー・サドル・ピックアップと交互に使っても大きな音量差を感じさせないでしょう。コンデンサー・マイクのバランス配分も絶妙で、フィード・バックが起き辛い点も見逃せません。Pro1と言うモデルはコンタクト・ピックアップをも装備した3ウェイ方式で、ボディ・ヒットも拾うという優れものです。

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(注目株のSkysonic。このモデルはコンデンサー・マイクを内臓したマグネティック・ピックアップT-903。)

<プロセッサー、外付けプリアンプ>


エレアコはほとんどの場合、オンボード・プリアンプが搭載されており、音量、音色の調整が手元でおこなえますが、後付けピックアップの場合は手元で調整できないものが多く存在します。しかしながら、オペレーターさんが常時つかない演奏環境であれば、自分自身で調整ができた方が便利です。そんなとき威力を発揮するのがアコースティック・ギター用のプロセッサーや外付けプリアンプです。またピックアップがパッシブの場合は、外付けのプリアンプはほぼ必須です。プロセッサーはエフェクター的要素が強いもの、プリアンプはハイ・インピーダンス信号をロー・インピーダンス化するD/I的機能に、音量、音色の調整機能を一体化したものと言えましたが、近年では両者の差がなくなりつつあります。

人気アイテムとしては、まずL.R.Baggs Para Acoustic DIがあります。ライブ・ハウスに行ったとき、演奏者の足元に良く見られる赤茶色のボックスです。フィード・バックを軽減するノッチ・フィルターを含む必要最低限の機能が凝縮されコンパクトにまとまっている点がポイントです。またL.R.Baggsは、チューナーを装備し大型化して操作性を高めたVenue DIや、ベーシックな細かい音作りには不向きながらトータルでスタジオ・クオリティに音質を向上させてくれるSession Acoustic DIなど、ラインナップを強化してきています。

Para Acoustic DIに負けじとシェアを広げているのが銀色のボックス、Zoom A3です。こちらはモデリング技術を駆使して、ピックアップ特有の癖を軽減し、生音の響きに近い音色を作り出してくれます。エフェクターも搭載しており、しかもプログラマブルなため、お気に入りの設定を複数記憶しておくことが可能です。

またFishmanはモデリング・プロセッサーのAuraのシリーズが有名でしたが、近年アナログ・プリアンプも刷新。アナログ・プリアンプとデジタル・エフェクターをオール・イン・ワンとしたTONEDEQは、プログラマブルではないもののシンプルで直感的な操作で人気を博しています。

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(ライブ・ステージの強い味方。L.R.Baggs Para Acoustic DI。)

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(モデリング機能付きプロセッサ^としては現在一番人気のZoom A3.)

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(アナログ感覚で操作できて、エフェクターも搭載したFishman Tonedeq。)

<エレアコ用アンプ>


最後にエレアコ用アンプについても触れておきましょう。

エレアコや後付ピックアップを装備したギターをステージで使用する場合、一般的にはPAに接続します。しかしながら、PAが用意されていなかったり、PAのモニター環境が悪いような場合にエレアコ用のアンプの出番となります。

近年ミュージック・バーやカフェでのライブ開催も珍しくなくなってきましたが、PA機材がなくとも、エレアコ用アンプを持ち込めばボーカル・マイクとギターを接続してワンマン・ライブがOKなのです。また中小のライブ・ハウスの場合、PAがあっても、モニター・スピーカーが少ない、または全く無いなどの理由でモニターがしづらいことがあります。そう言うときに、エレアコ用アンプを自分専用モニターとして使うことができます。

またエフェクターを駆使した演奏をするのであれば、自宅での練習時にエレアコ・アンプが必要になるでしょう。エレアコ用アンプはアコースティック・ギターの特性に合わせてあります。エレキ・ギター用のアンプを使うよりもクリアで、アコースティック・ギターらしい音色が得られるのです。

エレアコ用アンプとしてはRoland ACシリーズが圧倒的な人気を誇ります。また自宅練習用ということであればコンパクトなYAMAHA THR-5Aがお勧めです。

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(Roland ACシリーズの中の一番の人気アイテムAC40。)

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(コンパクトなエレアコ用アンプの定番YAMAHA THR5A。)

いかがでしたでしょうか。駆け足でご紹介いたしましたのでご不明な点などあるかと思います。ご質問などあれば、遠慮なく池袋店の白井までお問い合わせくださいませ。よろしくお願いいたします。

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この記事を書いた人

白井 英一郎
1960年生まれ。吉田拓郎を聞いてフォーク・ギターを始め、石川鷹彦をきっかけにブルーグラスにも興味を持つ。その後イーグルス、オールマン・ブラザーズ・バンドなどのアメリカン・ロックに傾倒。エレキ・ギターも弾くようになる。ギター、スティール・ギター、バンジョー、マンドリン、ウクレレ、三線を弾くマルチ・プレイヤーとして演奏活動をする現役ミュージシャンで、音楽誌や楽器専門誌のライターの肩書きも持つ。1970年代の音楽とファッションをこよなく愛し、音楽のあるスロー・ライフを実践するロハス・ピープル。入門者からベテランまで、お客様のライフ・スタイルに合った商品を提案する楽器のコンシェルジュ。

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