【Vintage File】#4 Gibson 1967年製 EB-0 Cherry ~マイノリティの美学~

何かに対し頑なである事は吉と出る場合もあれば凶と出る場合もある。そう感じる事が多々ある今日この頃です。

【Vintage File】第4回、エレクトリックベース回の初回となる今回は、ただひたすらに頑なであったこちらのモデルを紹介させて頂きます。

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渋谷店にて展示・販売中のこちらのモデルは1967年製 Gibson EB-0。
2PU仕様のEB-3ではなく、あえて1PU仕様のEB-0です。

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元々ギブソンのEB(エレクトリック・ベース)シリーズは、1951年に世界初の市販エレクトリック・ベースとして登場したFender Precision Bassに対抗するために登場した、その名も「Electric Bass」(後のEB-1)が始まりでした。
エンジニア出身のFenderと比較し元々アーチトップ系の楽器職人集団であったGibsonらしく、エンドピン部分に付属の棒状のスタンドをセットすることで、ウッドベースのようにボディを立てた姿勢で演奏ができるなど、伝統的な弦楽器のエッセンスを盛り込んだ作りでした。

その「Electric Bass(EB-1)」の後継モデルとして1959年に登場したのが、このEB-0です。と言っても登場した当時は、同時期のLes Paul Juniorのような丸みを帯びたダブル・カッタウェイ・ボディでしたが、1961年に今回紹介させて頂く個体と同様の、良く知られた所謂「SGシェイプ」にモデル・チェンジします。

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薄いマホガニー・ボディにショート・スケールのマホガニー・ネックを組み合わせたスタイル。ピックアップはフロントに専用のダブル・コイルPUを1基のみ搭載と、現代に於いてよく知られるエレキ・ベースとは異質なスペックとなっています。

細部を見ていきましょう。

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ミュート機構付きのブリッジです(本器はミュート用のスポンジは欠損しています)。ウッドベースに近いサウンドを出す事を狙ったもので、このあたりはFenderのエレキベースとは異なる、元来のアーチトップ屋ならではの設計思想が伺えます。

同様の設計思想はEB-3に搭載されている「バリトーン・スイッチ」等からも伺えますね。

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横倒しになった2基のコイルでポールピースを挟み込む形状が特徴的なダブル・コイルPUです。他のどのエレキベースとも似ていないローファイなサウンドの元となっています。

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ネックジョイント部です。同時期(1960年代)のSGと同様に、年式によってめまぐるしく形状が変化していきます。本器はヒール部分に段差あり、ネック側に平面が広く出た、典型的な60年代中~後期仕様のジョイントです。

先進的かつ鋭角的なダブル・カッタウェイボディを採用しながら、どこか伝統的な弦楽器の設計思想らしいエッセンスが随所に感じさせるEB-0。2PU仕様のEB-3共々、残念ながらFenderの牙城を崩すには至らず、ファズ搭載タイプやロングスケールモデルなどバリエーション・モデルをリリースしつつも、頑なに薄いSGシェイプのマホガニーボディ+ダブルコイルPUの仕様にはこだわり続け、結果1979年に一旦生産中止となります。

EB-0/EB-3はその後現在に至るまで、エレキベースのメインストリームからは外れた、「キワモノ」として捉えられていますが、このモデルでしか出しようのないサウンドがある事も事実。ジャック・ブルース(Cream)、ダグ・ユール(Velvet Underground)、佐藤研二(マルコシアスバンプ)といったプレイヤーの愛用でも知られています。

60年代ガレージロックのレコードで聴かれるような”あの”ローファイなトーン、あるいは近年のガレージ・リバイバルで深くディストーションやファズをかけた荒削りながらも図太いベースサウンドを求めるプレイヤーにとっては心強い相棒となってくれる唯一無二の1本なのではないでしょうか?

意図せずにGibsonが続いてしまいましたが、次回の【Vintage File】はどのような楽器が登場するのか、お楽しみに!

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