BOSS WAZA Craft一周年!
業界を揺るがした鮮烈のデビューから1年。
WAZA Craftとは一体なんだったのか。今回は歪みペダル2モデルに焦点を当てて振り返ってみたいと思います。
(左)BOSS / SD-1W SUPER OverDrive 技 Waza Craft 販売価格 16,200円 (税込)
(右)BOSS / BD-2W Blues Driver 技 Waza Craft 販売価格 16,200円 (税込)
WAZA Craftシリーズの共通仕様として、オペアンプを使用しないディスクリート回路の採用と、
S(スタンダード)とC(カスタム)の2モードの切り替えスイッチの搭載が挙げられます。
ディスクリート化のメリットは細かなパーツレベルでクオリティを詰められることと全体的なローノイズ化が可能な点にありますが、
工業的な視点で見るならばパーツの点数が多くなる事による製作難度の高さやそれに伴うコストの増加というデメリットを持っています。
個人レベルでエフェクターを作るような環境ではパーツ選びも楽しみのひとつとなりますが、
BOSSのような大きなシェアを持つマスプロダクツメーカーにとって、パーツのひとつからわざわざ選び直すということがいかに大変か、
想像を絶するような苦労がそこにはあったはずです。
そしてディスクリート回路による再製作を行い、内部的には全く違う構成になっているにもかかわらず、
Sモードのサウンドがベースモデルから決してかけ離れた音色にはなっていない辺り、さすがはBOSSのサウンドデザインと言えるでしょう。
サウンドの傾向として、Sモードはノーマルモデルの質感はそのままに、音の輪郭が際立ったクリアさを重視した味付けに感じられます。
CモードはSモードの音色に中低域を加えてボリューム感と図太さを持たせたようなサウンドとなり、
さながらペダルの手前にミッドブースターをひとつ挟んだような感じというとイメージが近いところでしょうか。
通常、歪みペダルの前にブースターを入れて信号を増幅すれば当然ノイズ量も跳ね上がりますが、
その辺りの処理は上手くなされており、ノイズを抑えながらもギターサウンドの肝となるミドルの押し出しを演出してくれます。
特にBD-2Wにおいては、ピッキングに対する追従性が良過ぎるあまりに
演奏の上手い下手がバレるとさえ言われるBD-2の扱いの難しさが和らいでいるような気さえしてきます。
WAZA Craftシリーズのペダルを見る時に必ずベースモデルと比べて、という考えが浮かぶのは当然のことであり、
BOSS自身もそれを念頭に製作したはず。
しかしながら、これらはもうまるで別の新しいエフェクターたちと考えるべきなのかも知れません。
というのもBOSSというメーカーはただただ過去を振り返る事をしないメーカーだからです。
30年前からのロングセラーモデルであるSD-1と90年代半ばに発売されオーバードライブの新たなスタンダードとなったBD-2。
言ってしまえばこの2モデルが作られた時にはインターネットによる情報の氾濫はなく、
ブティックペダルメーカーによるカスタマイズなども今ほどポピュラーでなかったのです。
90年代後半からはCOSMテクノロジーに注力し、今ではMDPというデジタルの新技術をも擁しながら、あえてアナログ回路に取り組んだ意欲的な新作。
そんなロマンに満ち溢れたエフェクターは一朝一夕で作ろうとして作れるものではありません。
エフェクターの歴史を作ってきたBOSSだからこそできたWAZA Craft。エフェクター好きにはぜひ一度手にしてみて頂きたい逸品です。
…個人的には次のWAZA Craftシリーズとして、PH-1とCS-1の『W』バージョンを密かに期待しています(笑)