Column for Beginners 第二回・ギターアンプとスピーカーキャビネットのお話
第二回を迎えました「Column for Beginners」。
この春からギターを始めたビギナーや、五月病から回復してこれからギターを頑張ろうという方に向けて、
エレキギターの構造や音作りを基本的な部分から細かく丁寧にご説明させて頂こう、というコラムです。
第二回のテーマは「ギターアンプとスピーカーキャビネット」について。
ギターアンプはエレキギターとシールドケーブルで接続し、ギターのピックアップで拾った電気信号を増幅して音声として出力する機材です。
ギターアンプには、信号の増幅回路(アンプ)部分とスピーカーキャビネットを一つの筺体に収めたコンボタイプと、
アンプヘッド部分とスピーカーキャビネットを別々にしたスタック(=セパレート)タイプの2種類があります。
コンボタイプの一例。Blackstar HT CLUB 40(チューブアンプ)
スタックタイプの一例。 Blackstar HT Stage 100&HTV-412(チューブアンプヘッド&12インチスピーカー×4キャビネット)
コンボタイプだとだいたい8~12インチ(1インチ=約2.54cmとして、約20cm~30cmほどです)口径のスピーカーを1つか2つ搭載しており、
スタックタイプ用のキャビネットだと12インチのスピーカーを2つか4つ搭載しているモデルが多いです。
スピーカーの口径は小さいほど高音が強く、大きくなればなるほど低音が強調される傾向になります。
スタックタイプのギターアンプの場合、スピーカーケーブルという専用のケーブルでアンプヘッドとスピーカーキャビネットを接続します。
この時は必ず、アンプヘッドのスピーカー出力ジャックに書かれている抵抗値(4Ω、8Ω、16Ωの3パターン)と、
スピーカーキャビネットの入力ジャックに書かれている抵抗値が同じであることを確認してから接続しましょう。
抵抗値が異なる状態で接続してしまうと、アンプヘッドとスピーカーキャビネット双方に負担が掛かり、
故障や破損の原因となりますので気をつけて下さい。
ギターアンプは増幅回路の構成により、増幅回路に全て真空管を用いたチューブ(=真空管)アンプと、
全てICを用いたトランジスタ(ソリッドステート)アンプの2つに分かれます。
増幅回路の初段(プリアンプ部)に真空管を使い、後段(パワーアンプ部)にICを用いたハイブリッドなモデルを製作しているメーカーもあります。
チューブアンプは、自然で温かみのあるトーンキャラクターを持ち、真空管に負荷をかけて電気信号をクリッピング
させることで生まれる太く甘い歪み(=ひずみ、と読みます)、いわゆるオーバードライブサウンドが最大の魅力。
その構造上、歪みの深さや音量を稼ぐ為には真空管の本数を増やす必要があるので、大音量を出せるアンプほどサイズも大型化していきます。
また音の増幅を行う真空管の状態によってもサウンドに変化が起こるので、長時間に渡って使用したり、
屋外など気温や湿度の高い環境で使用した際に、真空管が過剰に熱を持って音の質感が変わったりします。
真空管自体の寿命は一般的なオーディオ用途では約3~5年ほどと言われていますが、ギターアンプで使用する場合には
約1~2年ほどでの交換が必要と。
ごく初期に開発されたチューブアンプではボリュームコントロールが一つしかなかったので、
より強い歪みを得るにはとにかく音量を上げる必要がありましたが、
現在は歪みの深さを調整するプリボリューム(GAIN=ゲインと表記されるのが一般的)と、
全体の音量を調整するマスターボリュームのふたつのコントロールを持った2ボリューム構成のチューブアンプが一般的です。
チューブアンプを使用する際の注意点としては、必ずチューブが温まるのを待ってから音を出すこと。
電源(POWER)スイッチとは別に、スタンバイ(STANDBY)というスイッチが付いているので、
まず電源スイッチを入れて真空管に通電し、最低でも30秒ほど待ってからスタンバイスイッチをオンにします。
真空管に過度の負担を掛けると真空管自体の寿命が短くなってしまいますし、アンプの内部回路やスピーカーキャビネットに
ダメージを与えてしまうこともありますので、くれぐれも注意しましょう。
トランジスタアンプは、回路構成的に入力音をクリッピングさせずに音量を稼ぐ事ができ、チューブアンプと比べてノイズが少ないので、
濁りの無いクリーントーンやはっきりとした輪郭が求められる深い歪みのディストーションサウンドに向いています。
構造的にアンプ部分のサイズを小さく軽量にまとめることができ、耐久性も高く、環境を選ばず安定したパフォーマンスを発揮してくれます。
様々なアンプのサウンドを電気的に擬似再現するデジタルモデリングアンプもトランジスタアンプの仲間で、
ここ10数年のシミュレーション技術の大幅な進歩により、ギタリストの間でもポピュラーな存在になってきました。
デジタルモデリングアンプの一例。 Line6 Amplifi 75
小型のコンボタイプでも多彩なトーンを楽しめるデジタルモデリングアンプは自宅での練習用にも最適でしょう。
色々なアンプの実機に触ってみる機会を作るのはなかなか大変ですが、
モデリングアンプというのは基本的にメンテナンスがしっかりと施されたベストな状態のアンプの音をサンプル元にシミュレートしているものなので、
状態の悪いチューブアンプよりも優れたトーンを生み出すモデリングアンプも存在し得ると言えます。
チューブアンプもトランジスタアンプもそれぞれの美点があり、求める音や用途に合わせて、多種多様なモデルが発売されています。
日本の住宅事情ではアンプを大音量で鳴らすことが難しい場合もありますが、エレキギターをエレキギターたらしめる大事な相棒であるギターアンプ。
イシバシ楽器の豊富な品揃えから、お気に入りの一台を見つけられることを願っています。